ナヴィゲーションと地図にまつわる身近なQ&A

 

疑問・質問はお気軽に。このQ&Aコーナーでお答えしていきます。

 

Q1:女は地図が読めないの?

 

一般にはそのように信じられています。この俗説は2000年に「地図が読めない女、話が聞けない男」がベストセラーになって以来、一般的に定着してしまいました。しかし、男女の地図読み能力を比較した実証研究は必ずしも多くはありません。確かに、男女に「方向感覚質問紙」を行うと、女性の方が方向オンチだという結果が出ます。しかしこれはあくまで自己評価です。実際に憶えた道を戻ってもらったり、地図を使うテストを行うとテストの性質によっては男女の差がなかったりすることもあります。

 

心的回転課題と呼ばれるテスト(頭の中で異なる方向を持つ図形が同じものかどうかを判定する課題)を行うと、明らかに男女差があります。こういう基礎能力では確かに男女差はあるようです。しかし、道順の記憶や地図利用はいろいろな条件の影響を受けているので、必ずしも結果は明らかではありません。女性は基礎的な能力の低さは様々な方法によって補っているのかもしれません。また心理学的に差があるといっても、男女の平均値の差以上の個人差があります。男子の平均よりはるかに得点のよい女性もいれば、その逆もあります。

 

研究上は、女性は男性より読図に劣るとは言えない、というのがほんとうのところです。

 

 

Q2:地図をくるくる回すのは方向オンチの証拠なの?

 

Q1で指摘した心的回転課題は、男女や方向感覚の程度を問わず難しいものです。たとえばRとその鏡像が異なる図形であることは図形がいずれも正立であればすぐに分かりますが、一方が上下逆さまの場合には、少し考えないと分かりません。

 

地図を見る場合も同じで、地図の方向と実際の方向が一致しないと進む方向を間違えるなどのエラーが起こりやすいことが実験上も明らかです。残念ながら、方向感覚との関連は報告されていませんが、方向感覚のいい人でも、間違いの原因になることは確かなようです。方向オンチの証拠かどうかという点については明確な証拠はありませんが、間違いにつながりやすい持ち方をするよりもわかりやすく「回して、実際の方向と合わせて地図を持つ」ことをお勧めします。森の中のナヴィゲーションのエキスパートオリエンテーリングの選手たちは皆そのように地図を持っています。

 

 

Q3:山で道に迷わないためにはどうすればいいの?

 

山で遭難する人は警察庁の統計によれば、年間1600-1800人にものぼりますが、このうち道迷いによる人は約1/3の600-700人です。これは遭難原因のトップを占めます。さらに調査によれば、山に行く人の15-20%程度が過去1年間に道に迷ったことがあると答えています。道迷いは非常に身近な事故なのです。

 

では迷わないためにはどうすればいいか?ずばり地図が読めて使えるようになること、そのためのコンパスの使い方を知ること。もちろん、それらを持って山にいくことが大事です。そのポイントについては、本サイトでも紹介していく予定ですが、ナヴィゲーションとアウトドアの安全に役立つ書籍・商品の紹介に掲載の本などを参照してください。それから、ただ本を読むだけでなく、山を地図を持って歩く練習をすることです。当法人でも一般の人向けの読図講習会を行っていますが、最近は講習会を行うところも増えてきました。地図が読めるようになると、道に迷わないだけでなく、「地図からこんな情報が読み取れるのだ」という知的興奮も味わうことができます。

 

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

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