コラム4 地図のアイデア商品

大都市で震災にあったら・・・。運よく火災や建物の崩壊から逃れたとしても、自宅に帰るという試練が待っている。交通機関も止まり、自動車の通行もままならない街路を、なかには30kmを超える距離を、自力で帰らなければならない人も出るだろう。その時、果たして歩きとおせるのだろうか。迷わず帰りつけるのだろうか。

 

そんな不安を背景に、最近震災時の帰宅支援のための地図が相次いで刊行され、ちょっとしたベストセラーになっている。昭文社が出した「震災時帰宅支援地図」を手にとってみると、東京から放射線状に郊外に向かっている主要道路に絞って、距離や踏破の支援となるガソリンスタンドやコンビニが、詳細に掲載されている。地図自体は一般の地図とほどんど変わらず、それに主要道路沿いの上記施設や注意点が記載されているだけなので、出版社側からみれば、低コストで売り上げが見込めるアイデア商品と言える。実際、この地図の製作者が朝日新聞の「ひと」に取り上げられていて、「製作には6人が5日がかり」とあった。北ではなく、進行方向が地図の上を向いているという点では、同社が女性向け地図で成功した「リンクリンク」のサバイバル版とも言える。こんな形であるにせよ、地図とナヴィゲーションへの関心が高まるのは望ましい。

 

上述したように、この地図は、震災情報という点では目新しいものの、その実態はコンビニとガソリンスタンド、危険箇所が盛り込まれているものの、ナヴィゲーションの地図という点では、特別な工夫があるわけではない。主要道路では、おそらく地図なんかなくても、正しい方向に向かって歩き続けられるだろう。しかし、多くの利用者は、主要道路から外れたところに住んでいる。そこまでのナヴィゲーションについては、この地図には特別な情報が記載されているわけではない。研究や実践上、一般の人の地図利用能力の限界を知っている立場としては、そこでこの地図が役立つのかという点は、気になる。地図表現という視点からも、地図利用スキルの向上という点でも、やるべきことはこれからなのだろう。

 

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