M-nopコラム

ナヴィゲーションの伝道師、村越真による日々ナヴィゲーションコラム。

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最新コラム

2017年

5月

09日

コラム130:ゴールデンウィークは東京へ

 珍しく何の行事も入れていないゴールデンウィークオリエンテーリングの研修の準備で草津に行こうかとも思っていたのだが、わざわざ混んでいる時期に行楽地に出かけることもないだろう。ひょっとして東京なら空いている?ニュースウォッチ9の桑子アナも「東京は水色(平常時の人出より人出が少ない)」「最高は福井の80倍」と、行楽地の混雑情報を教えてくれた。

 

 明治時代の地形図に、オリエンテーリングのコースを組んで東京の城南地区を走る。目的地は今でも分かるはずの場所として大きな神社や仏閣、町歩き案内本に載っている史蹟や庚申塔などを選ぶ。明治初期には山手線も通っていなかったから、渋谷や池袋は狐や狸の出そうな農村だ。明治中期にはさすがにこのエリアは市街化されたが、そこから城南地区にかけては、里山と耕作地の田園が広がっ

ている。そんな風景を描写する明治期の地図を手にして目的地に向かって走ると、頭の中は明治の郊外の風景のイメージで満たされ、その風景の中にある特徴物を求めてナヴィゲーションしているうちに、次第に暗渠は「春の小川」に変わり、斜面緑地は武蔵野の雑木林に頭の中で変換されてしまう。

 

 明治31年作国木田独歩の「武蔵野」に「夕暮れに独り風吹く野に立てば、天外の富士近く、国境をめぐる連山地平線上に黒し」と描写したのは、さしづめ今のNHK放送センターのあたりであろう。渋谷周辺を散歩した独歩は、鳥の羽音、風のそよぐ音、叢の陰、林の奥にすだく虫の音、空車荷車が野路を横切る音、騎兵演習の斥候か、あるいは夫婦で遠乗りにきた外国人の馬の蹄が落葉をけ散らす音

を聞く。そんな風景が自分の頭の中にも知らず知らずのうちに蘇ってくる。

 

 古地図でのオリエンテーリング、ノスタルジアに浸れるだけではない。ナヴィゲーションスポーツのスキルの本質は、地図から現地と対応可能な必要最小限の情報を読み取ること、そして、本来は異なる情報量を持つ地図と現地を対応し、「ここだ!」と自分を納得させることにある。建物も道の多くの今とは異なる古地図では、もともと現地と対応できる情報は限られている。どの情報が利用でき

るかという視点で地図情報を読み取る。対応できる情報を風景の中から見つける。そのプロセスが地形や些細な傾斜の変化などに敏感にさせてくれる。ナヴィゲーションのトレーニングとしても得がたいチャンスなのだ。

 

 もう一日は、玉川上水の分水である品川用水を、武蔵境から大井町まで走った。電車で移動しても優に50分は越える距離である。25kmの距離を自分の足で走ってみると、江戸時代にこれだけの土木工事を成し遂げた技術力や財力、企画力が偲ばれる。ところどころに当時の水神や庚申塔、水車そのものはなくなっているが、その痕跡を示す立て看板などがあってあきない。

 

今年のゴールデンウィークは終わってしまったが、秋のシルバーウィークや来年のゴールデンウィークは、古地図を持って東京散策!はいかがだろう。ついでに村尾嘉陵の「東京近郊道しるべ」(江戸期の武家のお散歩日誌)や国木田独歩の「武蔵野」を読んでおくと、さらに頭が妄想モードになる。いつもよりちょっとばかりのんびりした東京で、お金、時間、エネルギーともに優しい田園散策体験が味わえる。

下北沢南部の北沢用水沿いにある森巌寺。山門の左にある石柱には、「東:あをやま(青山)、南:ゆうてんじ(祐天寺)、めくろふとう(目黒不動)」とある。

コラム一覧

no.130 ゴールデンウィークは東京へ New!!

no.129 那須岳雪崩遭難に思う

no.128 山岳救助有料化に思う

no.127 脳の仕組みと方向感覚

no.126 データベースの威力

no.125 橘樹今昔物語 

no.124 コンパスは飾りじゃない!

no.123 太陽が西から上がって東に向かう?

no.122 人事を尽くして天命を待つ

no.121 今、山のグレーディングが熱い! 

no.120 見えていない世界

no.119 後悔 

no.118 組み体操

no.117 通俗心理学の罠

no.116 古地図で蘇る東京

no.115 階層的規律は登山隊の成功につながるか?

no.114 精緻な数値情報は正しい危険評価に貢献するか?

no.113 山のグレーディング

no.112 リスクマネージメントとナヴィゲーションの発想

no.111 GPSスマホの落とし穴

no.110 地図の抽象性

no.109 道迷いシンポジウム 

no.108 ナヴィゲーションのファンタジスタ

no.107 登山届け義務化に反対する

no.106 ノーベル賞

no.105 安全と教育意義のジレンマ

no.104 リスクは誰にでも顕在化しうる

no.103 子どもの学び

no.102 江戸の近郷 

no.101 山岳雑誌に見るリスクマネジメント・道迷い遭難

no.100 今昔物語

no.99 城南地形萌えラン

no.98 ナチュラル・ナビゲーション

no.97 地図を使わない・・・:学校の自然体験

no.96 ドクタージェネラル

no.95 ナヴィゲーションを支える身体知

no.94 リスクマネージメントとナヴィゲーションの発想

no.93 拡張現実

no.92 空間認知心理学の進歩

no.91 研修の楽しみ

no.90 ナヴィゲーターの難しさ

no.89 地図は邪魔者

no.88 暗黙知としての地図読み

no.87 クイックOの可能性

no.86 冬山でのナヴィゲーション(2012/3/20)

no.85 はやぶさ

no.84 ナヴィゲーションスポーツで脳も体も健康に!

no.83 ナヴィゲーション・スポーツというコンセプト

no.82 反事実的思考 

no.81 山岳遭難の現状2011

no.80 登山に地図を生かすには?

no.79 できる人は地図思考

no.78 時には悪天候も悪くない

no.77 赤色立体図はすごい

no.76 ナヴィゲーションへの組織的な動き 

no.75 生きて帰る 

no.74 現在地が分からない

no.73 折り紙の地形

no.72 緊急特集:道迷い遭難

no.71 読めないふり

no.70 女は地図が読めないか?

no.69 GPS vs 地図読み

no.68 ブラッシュアップ

no.67 学習登山 

no.66 大人はなぜつまづくのか? 

no.65 読図を教える

no.64 ゆらぐ

no.63 高まる読図への関心

no.62 富士山アウトドアマップⅡ

no.61 地形萌え

no.60 読図力とその自己評価

no.59 中高年遭難という言説

no.58 2008全国遭難対策協議会に参加して

no.57 死者は語る

no.56 あらためて知るコンパスの効用

no.55 地図屋の気概(3)

no.54 地図屋の気概(2)

no.53 コンパスをテストする

no.52 広がる読図講習会

no.51 今年もセンター入試:1/21

no.50 07年を振り返って

no.49 ナヴィゲーション・マスター

no.48 女性セブン

no.47 地図屋の気概

no.46 読図講習会で学んだこと 

no.45 ショップと共催の読図講習会 

no.44 地図に訊け!

no.43 ハザードマップ実験をして

no.42 「考える力つく」地図帳

no.41 ロゲイン

no.40 尾根・谷を区別する 

no.39 地図から分かること 

no.38 センター入試再び

no.37 専門調査委員会に出席して

no.36 読図・ナヴィゲーションへの関心

no.35 冬眠

no.34 乗り過ごす

no.33 教育にオリエンテーリングを

no.32 地図物語

no.31 有度山ロゲイン

no.30 ブラックアウト再び

no.29 アウトドアショップの意気込み

no.28 危うく道迷い

no.27 海外遭難事情

no.26 地図で迷う

no.25 傾斜の感覚

no.24 実践の発想

no.23 『キルプの軍団』 

no.22 シルバの新しいコンパス 

no.21 香港でのハイキング  

no.20 地図を見る様々な視点 

no.19 ナヴィゲーションで「失敗学」しよう

no.18 被験者になる

no.17 定位を失う

no.16 地図という比喩

no.15 センター試験

no.14 GPSは役立つか

no.13 コンパスの使用説明書

no.12 読図講習会を行って

no.11 読み書きそろばん、ナヴィゲーション

no.10 ブラックアウト

no.9  方向音痴の人と街を歩く

no.8  ナヴィゲーションの生態学

no.7  究極のアウトドアマップ

no.6  地図への関心

no.5  あきれたガイドマップ

no.4  地図のアイデア商品

no.3  人はアウトドアで正しく地図を使えるか?

no.2  ナヴィゲーション用具の利用は難しい

no.1  狂ったコンパス 

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

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2015年3月のシンポジウムのプログラムと村越の発表資料を掲載しております。

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