M-nopコラム

ナヴィゲーションの伝道師、村越真による日々ナヴィゲーションコラム。

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2018年

6月

02日

コラム134:Control your destiny, or someone else will

 静岡大学の美術・デザイン専攻の学生内山晃輔さんが二科展の奨励賞を受賞した。Go or stop? Control your destiny, or someone else will.というのが主題で、昨年も同じモチーフでポスター大賞に入賞している。今回は子どもの滑り台にやはり信号機や警報器が乱雑に取り付けられている構図だが、昨年のポスター大賞受賞作は、見上げたアングルの鳥居に信号機が乱雑に取り付けられている。観る者の宗教観を問われるような構図だった。

 

 control=制御は、過酷な自然の中でのリスク管理に欠かせないキーワードだ。数年前、「死と隣り合わせ」に思える高所登山家にインタビューをしたり、彼らの書いた記事を分析したことがある。ほとんどの登山家が「危険を制御している」「制御できないリスクは嫌いだ」、さらに「リスクを制御することに喜びを感じる」と語っていた。

 

 リスクとは定義的に確率的な概念で、本来制御とは相容れない。しかし、自然の中で個人にふりかかるリスクの場合には、リスクを高める要因や兆候を感知することができる。たとえば精度の高まった天気予報は、かなりの程度リスクの変化を教えてくれる。もちろん、観天望気はその場でのリスクの変化を教えてくれる。そして感知してから重大な損害が発生するまでに主体的に制御可能であれば、個人的なリスクは一定程度まで制御することができる。自然の中で命を守るポイントはそこにある。

 

 制御可能なリスクがあるのは、自然の中だけではない。たとえば交通事故。交通法規を守って交通参加者になることは、交通事故のリスクを制御する基本である。だが、可能な制御はそれだけではない。リスクは不確実性の影響のことでもある。たとえ信号が青でも、そこには赤信号で車が突っ込んでくるというリスクがある。これはあり得るというレベルの話ではない。そのようなリスクを前提とする時、青信号に対して機械的にわたることは、他者が交通法規を守ってくれることに、いわば運命に命を預けたことになる。

 

 残念なことに、運命を他者に預けることの悲劇的な結果を時々、見聞きする。約1年前、私が所属する専攻を卒業した学生が交通事故に遭って亡くなった。まだ20代後半だった。彼と職場が同じだった知人が「自宅近くの横断歩道を渡っていた時に事故にあったらしい」と教えてくれた。ポスターのモチーフからすれば、彼はその時、自分の運命を他者の制御に委ねてしまったのだ。もちろん、交通法規を守っていれば十分自分の運命を制御できる世界が望ましい。その一方で、そうでないことが現実なのだ。小学生に限ってであるが、歩行中の事故の約7割が、歩行者に違反無し、というデータもある。

 

 私たちの生活は、様々な法規によって安全が守られている。意識するにしろしないにしろ、「だから安全だ」と考えることは、自分の運命を他者に委ねていることになる。このポスターはリスク研究者からすれば、そう語っているようにも見える。

 

このポスターは、たとえば、以下のURLで観ることができる。

https://shizuoka-univ-art-education.jimdo.com/2017/04/05/科展デザイン部において-4年生の内山晃輔君がポスター大賞を受賞/

コラム一覧

no.134 Control your destiny, or someone else will New!!

no.133 南極観測に地図は必要か?

no.132 世界最難関ロンドンのタクシー運転手試験

no.131 山のお約束

no.130 ゴールデンウィークは東京へ

no.129 那須岳雪崩遭難に思う

no.128 山岳救助有料化に思う

no.127 脳の仕組みと方向感覚

no.126 データベースの威力

no.125 橘樹今昔物語 

no.124 コンパスは飾りじゃない!

no.123 太陽が西から上がって東に向かう?

no.122 人事を尽くして天命を待つ

no.121 今、山のグレーディングが熱い! 

no.120 見えていない世界

no.119 後悔 

no.118 組み体操

no.117 通俗心理学の罠

no.116 古地図で蘇る東京

no.115 階層的規律は登山隊の成功につながるか?

no.114 精緻な数値情報は正しい危険評価に貢献するか?

no.113 山のグレーディング

no.112 リスクマネージメントとナヴィゲーションの発想

no.111 GPSスマホの落とし穴

no.110 地図の抽象性

no.109 道迷いシンポジウム 

no.108 ナヴィゲーションのファンタジスタ

no.107 登山届け義務化に反対する

no.106 ノーベル賞

no.105 安全と教育意義のジレンマ

no.104 リスクは誰にでも顕在化しうる

no.103 子どもの学び

no.102 江戸の近郷 

no.101 山岳雑誌に見るリスクマネジメント・道迷い遭難

no.100 今昔物語

no.99 城南地形萌えラン

no.98 ナチュラル・ナビゲーション

no.97 地図を使わない・・・:学校の自然体験

no.96 ドクタージェネラル

no.95 ナヴィゲーションを支える身体知

no.94 リスクマネージメントとナヴィゲーションの発想

no.93 拡張現実

no.92 空間認知心理学の進歩

no.91 研修の楽しみ

no.90 ナヴィゲーターの難しさ

no.89 地図は邪魔者

no.88 暗黙知としての地図読み

no.87 クイックOの可能性

no.86 冬山でのナヴィゲーション(2012/3/20)

no.85 はやぶさ

no.84 ナヴィゲーションスポーツで脳も体も健康に!

no.83 ナヴィゲーション・スポーツというコンセプト

no.82 反事実的思考 

no.81 山岳遭難の現状2011

no.80 登山に地図を生かすには?

no.79 できる人は地図思考

no.78 時には悪天候も悪くない

no.77 赤色立体図はすごい

no.76 ナヴィゲーションへの組織的な動き 

no.75 生きて帰る 

no.74 現在地が分からない

no.73 折り紙の地形

no.72 緊急特集:道迷い遭難

no.71 読めないふり

no.70 女は地図が読めないか?

no.69 GPS vs 地図読み

no.68 ブラッシュアップ

no.67 学習登山 

no.66 大人はなぜつまづくのか? 

no.65 読図を教える

no.64 ゆらぐ

no.63 高まる読図への関心

no.62 富士山アウトドアマップⅡ

no.61 地形萌え

no.60 読図力とその自己評価

no.59 中高年遭難という言説

no.58 2008全国遭難対策協議会に参加して

no.57 死者は語る

no.56 あらためて知るコンパスの効用

no.55 地図屋の気概(3)

no.54 地図屋の気概(2)

no.53 コンパスをテストする

no.52 広がる読図講習会

no.51 今年もセンター入試:1/21

no.50 07年を振り返って

no.49 ナヴィゲーション・マスター

no.48 女性セブン

no.47 地図屋の気概

no.46 読図講習会で学んだこと 

no.45 ショップと共催の読図講習会

no.44 地図に訊け!

no.43 ハザードマップ実験をして

no.42 「考える力つく」地図帳

no.41 ロゲイン

no.40 尾根・谷を区別する 

no.39 地図から分かること 

no.38 センター入試再び

no.37 専門調査委員会に出席して

no.36 読図・ナヴィゲーションへの関心

no.35 冬眠

no.34 乗り過ごす

no.33 教育にオリエンテーリングを

no.32 地図物語

no.31 有度山ロゲイン

no.30 ブラックアウト再び

no.29 アウトドアショップの意気込み

no.28 危うく道迷い

no.27 海外遭難事情

no.26 地図で迷う

no.25 傾斜の感覚

no.24 実践の発想

no.23 『キルプの軍団』 

no.22 シルバの新しいコンパス 

no.21 香港でのハイキング  

no.20 地図を見る様々な視点 

no.19 ナヴィゲーションで「失敗学」しよう

no.18 被験者になる

no.17 定位を失う

no.16 地図という比喩

no.15 センター試験

no.14 GPSは役立つか

no.13 コンパスの使用説明書

no.12 読図講習会を行って

no.11 読み書きそろばん、ナヴィゲーション

no.10 ブラックアウト

no.9  方向音痴の人と街を歩く

no.8  ナヴィゲーションの生態学

no.7  究極のアウトドアマップ

no.6  地図への関心

no.5  あきれたガイドマップ

no.4  地図のアイデア商品

no.3  人はアウトドアで正しく地図を使えるか?

no.2  ナヴィゲーション用具の利用は難しい

no.1  狂ったコンパス 

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

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