M-nopコラム

ナヴィゲーションの伝道師、村越真による日々ナヴィゲーションコラム。

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2017年

8月

29日

コラム131:山のお約束

 ヨーロッパの登山国と言えばスイスやドイツが思い浮かぶだろう。スイスには世界から登山家が目指す山あるので当然の印象だが、登山の国民的広がりという点ではノルウェーも負けていない。登山をする人が人口のどの程度の割合を占めるかについての統計では、日本の登山人口は8-10%ということになっている。これは1年に1回以上登山・ハイキングをする人の割合である。15歳以上が対象なので、概ね800-1000万人という数になる。

 

 同様の統計(年に1回以上)でノルウェーはなんと90%が登山人口なのだ。少し古い統計だが、人口約400万人強のノルウェーにあって、登山連盟(正確にはトレッキング連盟と呼ぶべきであるが)の加盟数は20万人。20人に一人が加盟員なので、日本で言えば600万人近い会員がいることになる。連盟によって全国各地の登山ルートにマーキングや山小屋の整備がなされている。

 

 先日ノルウェーを訪れた時にも、山国ノルウェーらしさを感じさせる経験をした。五輪で有名になったリレハンメルの普通のお土産屋に寄った時のことだ。写真のような紙ナプキンがお土産に売っていたのだ。その国らしい風景や意匠の図柄を描くお土産用紙ナプキンは珍しくない。この紙ナプキンに書かれている「fjellvettreglene」は英訳すればNorwegian Mountain Code、つまりは山登りのための規範、という意味で、その9箇条が書かれているのだ。この「お約束」は英語にも訳されて、ウェブでも見ることができる(https://www.fjellforum.no/forums/topic/4416-the-norwegian-mountain-code-fjellvettreglene-in-norwegian/

 

 「よく準備して入山しよう」「地図とコンパスを使おう」などは日本にもそのまま当てはまる。ただし地図とコンパスの使い方については、文章末に示したように、ナヴィゲーションの中でどう使うべきかについてのより具体的な方法が指摘されている。そのほかの7項目の中でノルウェーらしいものと言えば、他の一般的な項目に並んで「体力を温存して、必要なら雪洞を作りなさい」くらいだろ 

う。山で自分の身を守るためにすべきことは世界のどこでもあまり変わらないということだ。

 

 個人的に興味深かったのは、「あなたのルートについての言葉を残しなさい」差し詰め日本なら「登山計画書を提出しましょう。」だが、それをより本質的な「ルートについての言葉を残す」と表現している点が注目に値する。もっとも昔はなかった「notification box(ルートについての記載書入れ箱)が小屋や山頂に設置されているところを見ると、本来あるべき山の習慣についての規範がノル 

ウェーでも崩れつつあるのかもしれない。

 

use map and compass(上述URL英語版より)

Always have and know how to use map and compass. Before departing, study the map and trace your route to gain a basis for a successful tour.  

Follow the map, even when weather and visibility are good, so you always know where you are. When visibility deteriorates, it can be difficult to determine your position. Read the map as you go and take note of points you can recognize. Rely on the compass. Use a transparent, watertight map case attached to your body so it cannot blow away. Take bearings between terrain points on the map that can guide you to your goal. Use the compass to stay on a bearing from a known point.

 

日本語訳

 地図とコンパスを常に持ち、そして使い方を知っておきましょう。出発前に地図を注意深く眺め、あなたのルートを地図上でたどることでトレッキング成功のための基礎を得ておきましょう。天候と視界がよい時でも地図上で場所を追い、いつでもどこにいるか分かるようにしておきましょう。もし視界が悪い時には、現在地を把握することは難しくなるかもしれません。進む時に地図を読み、認識 

可能なポイントを意識しておきましょう。コンパスを信じましょう。透明で耐水性のあるマップケースを使い、風で飛ばされないように身体に付けておきましょう。地点間では進行方向を把握することで、目標地点までそれによって誘導されるようにしましょう。そして既知の点からの進行方向から離れないようにコンパスを使いましょう。

 

 

「山のお約束」を書いたお土産用紙ナプキン

山頂に設置されたルート記載書入れ


コラム一覧

no.131 山のお約束 New!!

no.130 ゴールデンウィークは東京へ 

no.129 那須岳雪崩遭難に思う

no.128 山岳救助有料化に思う

no.127 脳の仕組みと方向感覚

no.126 データベースの威力

no.125 橘樹今昔物語 

no.124 コンパスは飾りじゃない!

no.123 太陽が西から上がって東に向かう?

no.122 人事を尽くして天命を待つ

no.121 今、山のグレーディングが熱い! 

no.120 見えていない世界

no.119 後悔 

no.118 組み体操

no.117 通俗心理学の罠

no.116 古地図で蘇る東京

no.115 階層的規律は登山隊の成功につながるか?

no.114 精緻な数値情報は正しい危険評価に貢献するか?

no.113 山のグレーディング

no.112 リスクマネージメントとナヴィゲーションの発想

no.111 GPSスマホの落とし穴

no.110 地図の抽象性

no.109 道迷いシンポジウム 

no.108 ナヴィゲーションのファンタジスタ

no.107 登山届け義務化に反対する

no.106 ノーベル賞

no.105 安全と教育意義のジレンマ

no.104 リスクは誰にでも顕在化しうる

no.103 子どもの学び

no.102 江戸の近郷 

no.101 山岳雑誌に見るリスクマネジメント・道迷い遭難

no.100 今昔物語

no.99 城南地形萌えラン

no.98 ナチュラル・ナビゲーション

no.97 地図を使わない・・・:学校の自然体験

no.96 ドクタージェネラル

no.95 ナヴィゲーションを支える身体知

no.94 リスクマネージメントとナヴィゲーションの発想

no.93 拡張現実

no.92 空間認知心理学の進歩

no.91 研修の楽しみ

no.90 ナヴィゲーターの難しさ

no.89 地図は邪魔者

no.88 暗黙知としての地図読み

no.87 クイックOの可能性

no.86 冬山でのナヴィゲーション(2012/3/20)

no.85 はやぶさ

no.84 ナヴィゲーションスポーツで脳も体も健康に!

no.83 ナヴィゲーション・スポーツというコンセプト

no.82 反事実的思考 

no.81 山岳遭難の現状2011

no.80 登山に地図を生かすには?

no.79 できる人は地図思考

no.78 時には悪天候も悪くない

no.77 赤色立体図はすごい

no.76 ナヴィゲーションへの組織的な動き 

no.75 生きて帰る 

no.74 現在地が分からない

no.73 折り紙の地形

no.72 緊急特集:道迷い遭難

no.71 読めないふり

no.70 女は地図が読めないか?

no.69 GPS vs 地図読み

no.68 ブラッシュアップ

no.67 学習登山 

no.66 大人はなぜつまづくのか? 

no.65 読図を教える

no.64 ゆらぐ

no.63 高まる読図への関心

no.62 富士山アウトドアマップⅡ

no.61 地形萌え

no.60 読図力とその自己評価

no.59 中高年遭難という言説

no.58 2008全国遭難対策協議会に参加して

no.57 死者は語る

no.56 あらためて知るコンパスの効用

no.55 地図屋の気概(3)

no.54 地図屋の気概(2)

no.53 コンパスをテストする

no.52 広がる読図講習会

no.51 今年もセンター入試:1/21

no.50 07年を振り返って

no.49 ナヴィゲーション・マスター

no.48 女性セブン

no.47 地図屋の気概

no.46 読図講習会で学んだこと 

no.45 ショップと共催の読図講習会 

no.44 地図に訊け!

no.43 ハザードマップ実験をして

no.42 「考える力つく」地図帳

no.41 ロゲイン

no.40 尾根・谷を区別する 

no.39 地図から分かること 

no.38 センター入試再び

no.37 専門調査委員会に出席して

no.36 読図・ナヴィゲーションへの関心

no.35 冬眠

no.34 乗り過ごす

no.33 教育にオリエンテーリングを

no.32 地図物語

no.31 有度山ロゲイン

no.30 ブラックアウト再び

no.29 アウトドアショップの意気込み

no.28 危うく道迷い

no.27 海外遭難事情

no.26 地図で迷う

no.25 傾斜の感覚

no.24 実践の発想

no.23 『キルプの軍団』 

no.22 シルバの新しいコンパス 

no.21 香港でのハイキング  

no.20 地図を見る様々な視点 

no.19 ナヴィゲーションで「失敗学」しよう

no.18 被験者になる

no.17 定位を失う

no.16 地図という比喩

no.15 センター試験

no.14 GPSは役立つか

no.13 コンパスの使用説明書

no.12 読図講習会を行って

no.11 読み書きそろばん、ナヴィゲーション

no.10 ブラックアウト

no.9  方向音痴の人と街を歩く

no.8  ナヴィゲーションの生態学

no.7  究極のアウトドアマップ

no.6  地図への関心

no.5  あきれたガイドマップ

no.4  地図のアイデア商品

no.3  人はアウトドアで正しく地図を使えるか?

no.2  ナヴィゲーション用具の利用は難しい

no.1  狂ったコンパス 

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

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2015年3月のシンポジウムのプログラムと村越の発表資料を掲載しております。

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