コラム19 ナヴィゲーションで「失敗学」しよう

最近の朝日新聞に「失敗学」の提唱で有名な畑村洋太郎氏が、「囲碁で失敗学をしよう」という提案をしていた。囲碁は言うまでもなく対戦ゲームであり、自分がどんなに力を尽くしても相手が強ければ負ける。またプロの棋士ですら、時々ポカをして負けることもある。いわば失敗の宝庫だというのだ。その失敗の原因を突き止める、そのために省察する、また失敗することで謙虚に自分の行為を考えることができるとも言う。

 

失敗が頻繁におき、その省察が次の飛躍へのステップとして不可欠であるという点で、オリエンテーリングやナヴィゲーションも囲碁に劣らないよい題材だろう。特に自然の中のナヴィゲーションでは、いかに地図という詳細な情報が与えられていても、その地図上で思い浮かべた通りにはことは進まない。地図に載っているのかいないのか判然としないけもの道がある。時には地図が古くなって変わっている。地図から思い浮かべたイメージ通りに現実が展開しないこともある。

 

そもそも地図を使い慣れない人にとっては、地図を使って自分の行動を思い浮かべることすら難しい。そんな状況の中で、失敗のないナヴィゲーションというのは、エキスパートですら皆無に近い。むしろエキスパートは、自分の失敗のくせを知り、それを未然に防いだり、あるいは発生した失敗を最小限に抑える危機管理ができるスキルを持っているのだし、そのための省察を繰り返してきた存在である。

 

そう考えると、曖昧模糊とした自然の中で行なわれるナヴィゲーションこそ、失敗学の題材にふさわしい。失敗体験を親や教師から奪われつつある現代の子どもたちにとっても、よい失敗経験の場となるのではないだろうか。

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