相次ぐ遭難を憂慮して、昨年安全登山検定を行なって遭難対策関係者の間で話題になった埼玉県秩父警察署(コラムno.58 2008全国遭難対策協議会に参加して参照)などが中心になって、山歩きをしながら遭難防止の知識やスキルを学習することができる「学習登山コース」が開設された。場所は、西武秩父線の芦ヶ久保駅起点の「横瀬二子山」である。
登山道の入り口に最初の解説がある。持ち物や登山計画書を出す重要性など、山に入る前の注意が書かれている。そこから10分ほど登った絶妙な位置に、「登山を開始した時間を記録していますか?」と問い、衣服による温度調節や靴紐の点検を促す。その後も、「落石への対処」や「地図を見ることの重要性」「気候や温度に関するミニ知識」など、実用的な知識が提供されていた。緊急時の連絡法として、携帯電話の上手な使い方やそれによって助かった人の事例を出すなど、情報の提供の仕方も工夫されている。山頂では、近くに見える山や街を同定させる問題も出題されている。内容については、かなり考え抜かれたものと思われる。
惜しむらくは地図が一枚も入っていなかったことだ。また山頂以外にも現在地を考えさせる問題があってもよかっただろう。ここは尾根や沢?といった問もあったが、他の情報に埋もれてしまい、やや弱い。登山コースははっきりした地形の中に設定されているのだから、せめて尾根や谷を地図で示し、それを実際の地形で実感させるような問題を出したらさらによかった。また、途中で現在地がどこかを考えさせる問題もほしい。ただ「地図が必要」と言われるよりも、地図に関する関心も高まったのではないだろうか。
今後の様々な展開の可能性はあるが、まずは一般登山者に届きやすいこのような試みがなされたことを評価したい。