コラム44 地図に訊け!

平板測量で地図が作られていた時代には、測量官は山の裏側を見ずに描けるくらいでないとだめだと言われていたそうだ。そういう逸話があることは知っていたが、本書を読むと、空中写真によって測量が行なわれる以前には、そういう測量が行なわれていたのは事実のようだ。

 

全般的には地図の蘊蓄本だが、2章の「地図作りの、なぜ」が地図のユーザーとしては興味深い。平板測量をしていた時代には、測量官が「勘」を働かせて描いていた。「勘」を働かせるということは、認知心理学的に言えば、たとえば河岸段丘ならこうなるはず、というスキーマ(この場合は、個々の特徴的な地形の特徴に関する一般的知識)を使っている訳である。だから、当時の地図を見ると、むしろ今の地図よりも、それらしく地形の特徴が表されていることもある。今は空中写真から主観を交えずに描く。山の中に入ってオリエンテーリング用地図を作成していると、等高線が「見た目」をあまり反映していないことが往々にしてあるが、その理由は、現代の地図の等高線が、「客観的に」描かれているからである。

 

その他にも森林地の等高線は一本一本ではなく全体の地形をイメージしながら等高線を引くとか、山の中の道は信用できないなど、作る側の論理が余すところ無く紹介されている。これは地図を使いこなそうというユーザーにとっては非常に有益な情報である。

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