コラム13 コンパスの使用説明書

アウトドア用コンパスの代名詞であるシルバコンパスには32pにわたる解説書がついている。様々な注意事項も含めて、コンパスの使い方を場面に応じて詳しく説明している点は、評価に値する。しかし、その内容には問題が多い。読図講習会をしていると、参加者から「コンパスの説明で、目的地に連れて行ってくれる(導いてくれるという意味か?)機能があるが、どう使えばいいのか?」という質問を受ける。あるいは「コンパスの使い方が難しくてよくわからない」と言われる。どちらも詳しすぎる、そして優先度を考慮しない不適切な説明順序による誤解である。

 

シルバの説明書では、使う上での留意事項の後、使い方についての最初の説明で、目標物への角度を測る方法が出ている。次に出ているのが、進みたい方向に角度をセットして進む方法(いわゆる直進)である。いずれも、アウトドアでコンパスを使う大多数の人にとっては無縁、あるいは不要な使い方だ。

 

さらにその後、駅前の案内図を使って目的地を目指す方法や、左右にうねっている山道を歩くための方法が出ている。いずれも、実際にはまっすぐ進めない環境下である。一応駅前の案内図の場面では、「まっすぐ進めるとは限らない」旨の注意書きが書かれている。だとすれば、最初からコンパスセットは無意味なことになる。

 

ナヴィゲーションに習熟した人なら、コンパスのセットと地図読みを組み合わせて目標地点を目指すこともできるだろう。だが、初めてコンパスを手にし、この解説書を読んだ人であれば、「コンパスさえあれば、目標地点に着ける」と誤解してしまうのではないだろうか。先ほどの質問も、そのような人が決して例外的ではないことを示している。

 

もともとシルバコンパスは、急な傾斜地も少なく、森の中を自由に直進できる北欧で、そのために開発された。コンパスの解説書に載っている方法もそれをベースにしたものだ。しかし日本の自然環境は違う。やぶもあれば、急斜面もあり、まっすぐは進めない場所が多いのだ。そのような環境で、直進さえできれば目的地に到達できるような錯覚を与える記述は問題であろう。そのために、コンパスが本来もっとも役立つ方法と場面について、利用者が十分に意識できないため、「プレートコンパスは難しい」と思い、コンパスの利用度が下がることはもっと問題である。

 

解説書が改版される時には、ぜひ内容を改めてもらいたいものだ。

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