9月に発行した読図ワークブックが脳トレブームに乗って爆発的に売れて、川島隆太ばりに研究棟が建つ予定は潰えたが、9月から行ったアウトドアショップとタイアップした屋内講習・屋外講習、さらには大学の公開セミナーで行った読図講習、いずれも盛況だった。9月の講習会が、NHKの東海ローカルの番組で取り上げられたことも大きかったようだ。また、大学のワンゲル部への読図指導、知人に対しての取材を兼ねての読図山行などもおこなった。
これらの講習会や指導では、読図への潜在的な興味関心、またそのスキルの習得意欲が決して低くないことを実感することができた。擬似的になりがちな屋内講習でも、受講者はかなり意欲的に取り組んでくれたし、面白さを感じてくれたようだ。その場で、随分読図ワークブックが売れたりもした。そういうとっかかりを提供していくことが今後も重要なのだろうと実感させられた。
講習会では、同時に読図スキルの実態についても深く考えさせられる結果となった。登山経験がある程度あっても、山で使う基本的な地図記号についての理解がおぼつかない受講者も少なくない。尾根・谷線を把握することも山での地形図読みの基本だが、これが実は意外に難しいのだということにも気づくことができた(これについてはコラム40参照)。
関連して、ハザードマップの研究で、1:25000と対応させて住所の現在地を特定し、避難経路を考えさせる課題の分析を行っているが、その中であまりに現在地の特定成績が悪いのにはびっくりした。ハザードマップには特定すべき地名「**幼稚園」が明確に載っている。第一にその地名のすぐ北にある赤い記号(凡例を見ると、これは老人施設であることが分かるはず)と間違えたり、全く違う場所を特定したりする誤りが多く、なんと正答率は38%に過ぎなかった。洪水のハザードマップでも同じような傾向が指摘されていたが、これではどんなにいい地図ができても、適切な避難ができないだろう。
まさに「生きる力」である読図・ナヴィゲーションスキルの実態を改めて実感し、「日本人の地図読みを変える」ことの必要性を痛感した。