コラム42 「考える力つく」地図帳

小学校の社会科では地図帳が教科書として位置づけられており、帝国書院がほぼ100%のシェアを占めている。工夫されているとは思うが、やや表現が小学生を過小評価しているのではないかと思われ気になっていた。同じようなことを考える人はいるのだろう。100マス計算の実践で有名な陰山英男氏が校長をしている立命館小学校では、独自の地図帳「考える力がつく子ども地図帳」(草思社)を採用している。

 

いわゆる地図帳に期待する各地の区分図の分量については物足りないものの、この草思社地図帳の特徴は地図への導入部と地形図の大幅な採用である。かなりリアルな鳥瞰図とそれに対応する絵地図風の平面図、そして地形図が並べてあり、それぞれの特徴が分かるとともに、記号化された地形図の背後にあるリアリティーをイメージしやすくなっている。同様の工夫は区分図にも見られ、そこでは地形図とカシミール3Dによる鳥瞰図が並置され、やはり地形図からのイメージ喚起を促進する仕組みになっている。

 

さらに気に入ったのは、使う目的によっていろいろな縮尺の地図があるという見出しで、京都の1:10,000から1:200,000が並置され、同じ場所の地図でも描かれ方が全然違うことが暗に感じ取れるようになっている。異なる縮尺の地図やイラストマップ間の対応課題の成績が、社会科の学力テストによれば社会科中でも低いレベルにあることを考えれば、異なる地図の並置という工夫は、地図を読む学力を高めることにつながるだろう。

 

考える力が付くかどうかは、使い方次第だと思うが、この年代の子どもに積極的に地形図を見せる姿勢とそれを裏付ける鳥瞰図との並置という工夫は評価したい。

 

 

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