毎年10月に、小平にある国土交通大学校の研修に講師として招かれている。対象は国土地理院の係長クラスの研修で、業務に直接役立つ知識というよりは地図に関する知識を広げるという趣旨の講義なので、こちらもユーザーの立場から感じる地図やそれを使う人の問題点を自由に話している。
登山者が使う地図としては、予想される以上に地形図の利用率は高い(40%弱、ちなみに登山用地図は65%を越える。両方持っている人がいるので合計は100%を越えている)とか、「地形図に出ている登山道は失礼ながらでたらめに近い」と言った話もざっくばらんにした。また、それに対して官製の地図に登山ルートが明示されているノルウェーやスイスの地図づくりが参考になるのではないかという指摘もした。
地形図の登山道がしばしば間違っていることは地図を使う登山者には周知の事実であるが、これは地理院も気にしているらしい。「山と渓谷」誌2007年1月号の平塚氏の取材でも、地図が多少古くなっていても重大な結果には至らないが、山の登山道だけは別であるという認識は地理院も持っている、という報告があった。その一方で、登山道を正確に記すには空中写真の図化だけでは不十分で現地調査が不可欠である。そこに十分なマンパワーを割けないという現実もある。
そんな話をしたら、講義の後に北海道担当の受講者がやってきた。北海道では、登山道の実地調査に基づく記載を進めて、地形図の登山道は概ね満足できるレベルに達するという。ただ難路に関しては、その利用を誘発することに対して責任が持てないので、記載しない方針だということも聞いた。
こうした取り組みが、登山者の多い中部地区でも早く行なわれることを期待したい。