コラム12 読図講習会をおこなって

地図と風景から等高線の読み取りと対応を机上練習
地図と風景から等高線の読み取りと対応を机上練習

静岡のあるアウトドアショップと共催で、読図・ナヴィゲーション講習会を開催した。私の勤務する大学の山岳部の学生も含めて20人を越える盛況であった。

 

講習会参加者のキャリアは様々である。ほとんど経験のない初心者も少なくない。その多くは、「尾根って?谷って?」地形の基本的な単位さえ識別がおぼつかない。彼らの多くは山岳会やクラブに属しているわけではないので、必要性は感じていても、読図スキルを習得する機会がないのだろう。確かに、有名な山ではルートも道標もしっかりしている。読図スキルがなくても、迷うことは少ない。だが、低山・里山に出かけると、地図にはない道も多く、読図スキルが必要になる。そこで、講習会に参加した、と言う人もいた。

 

地図の整置によって目標地点の方向を確認する参加者
地図の整置によって目標地点の方向を確認する参加者

講習会では、簡単に山岳遭難とそこに占める道迷いの状況を解説した後、読図の基本について解説する。読図スキルを身に着けるためには、実体験が欠かせない。だがそれと同時に、何を読み取るか、それをどう使うかを明確にしておかないと、せっかくの実体験も生きない。私の講習会では、たいていの場合、机上と屋外を組み合わせて実施するが、その両方を組み合わせる講習は、評価が高い。

尾根の配置を地図から読み取り示されたパターンの場所を見つける練習
尾根の配置を地図から読み取り示されたパターンの場所を見つける練習

机上講習では、風景写真と地図を見せながら、「どこから撮った写真でしょう?」という問題を数多くやる。ナヴィゲーションの中で現在地の把握は基本中の基本である。読図もそのために必要なのだ。「どこから撮った写真でしょう」問題をやると、ただ地図記号が分かるだけではだめで、風景から特徴を読み取ったり、風景と地図を交互に比べながら、さらに情報を読み取ったり、論理的に考えるという、ナヴィゲーションに必要なメンタル・スキルが意識できる。参加者の反応からは「難しい」と感じられていることは間違いないが、「現在地を把握する」という明確な目的があるので、しっかり取り組んでくれる。正解が出なくても、その難しさを実感してもらうことが重要なのだ。野山の中で道に迷ったときは、もっと難しい状況なのだから。

実際に山の中を歩きながらの現在地把握も、やはり難しい。尾根・谷を勘違いしたり、だいたいの場所は示せても、「ここ!」とピンポイントで示せない。それに対して、「ピンポイントで示せなければ、ルート維持にも影響する。針でつつくように、示して!」と促す。その際、等高線のちょっとした曲がり、植生情報などが利用できることも、参加者にとっては新鮮なようだ。

遠くに見える目標物を使って、現在地を知る方法(パイロッティング)の練習
遠くに見える目標物を使って、現在地を知る方法(パイロッティング)の練習

アウトドアの安全はもちろんだが、私自身はそれ以上に地図を読み込み、地形が分かることが楽しい。読図講習会を通して、山歩きのもう一つの楽しさを広げていきたい。

地図と周囲をよく読みとり、現在地を確認する、現在地の確認はナヴィゲーションの基本であり、徹底的に練習した。
地図と周囲をよく読みとり、現在地を確認する、現在地の確認はナヴィゲーションの基本であり、徹底的に練習した。

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

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