全国山岳遭難対策協議会で講演を頼まれた関係で、他の国の遭難事情をかなり調べた。イングランドやウェールズ、スコットランド、カナダ。いずれも詳細な山岳遭難のレポートがウェッブで見ることができる。
スコットランドのもの(以下のURLにフルペーパーのpdf版のダウンロード可能:http://www.mountaineering-scotland.org.uk/safety/bobsharp.html)は、山の安全についてのメーカーや有識者へのアンケートから、事故の分析、提言など200p以上になるもので、興味深いデータが満載だった。それによれば、スコットランドでは、遭難原因の第一位は「低いナヴィゲーション技術」であり、全遭難の30%近くを占めていた。スコットランドの統計では原因とその結果は別個に集計されており、「低いナヴィゲーション技術」は、当然「ロスト=道迷い」につながることが多いのだが、「滑落」の原因の8.9%にもなっていることも分かる。統計には出てこないが、このあたりの事情は日本とあまり変わらないようだ。アンケート調査からも、ナヴィゲーション技術の低さが重要な問題と認識され、ナヴィゲーション講習の重要性が指摘されていた。
http://www.mountaineering-scotland.org.uk/には、ナヴィゲーションのための12のヒント(うち5つは非常に重要)とその詳細が紹介されている。用語を見ると、オリエンテーリングの影響をだいぶ受けているように思える。こうした「教程」の日本版を作成することは重要なことだろう。
カナダのページ(http://alpineclub-edm.org/accidents/causes.asp)も、事例の詳解があって面白い。ほとんどはクライミング関係だが、事故の報告書もオンラインで購入できる。
気軽に引き受けたこの大会は、行ってみてびっくり。文科省の課長や静岡の教育長も来る盛大な大会だった。その中で基調講演をさせてもらったおかげで、夜の情報交換会でも、多くの人と有意義な情報交換をすることができた。
多くの人が、読図やナヴィゲーション技術に興味を持っている。消防や警察の救助隊のように、それを仕事に使う人たちでも、技術の不足は痛感しており、習得の機会やノウハウを求めているようであった。ミーハーな私としては、富山県警察山岳警備隊の方とお話できなかったのは残念だったが、地元静岡の消防の方から、「是非ナヴィゲーションと読図の講習をしてほしい」と言われ、プロガイド協会の会長の方に興味を持っていただいたのはうれしかった。
さすがに若い警察や消防の隊員が多いビュフェでは、あっという間に炭水化物がなくなって、ひもじい思いをした。