コラム147:ブレークスルー感染

 ブレークスルー感染とはキャッチーな言葉だ。すさまじいことが起こっているような印象がある。本当だろうか?

 

 この言葉はワクチンを2回接種して抗体ができているはずなのに感染している現象をさすらしい。だが、もともとワクチンの有効性はファイザー・モデルナともに95%程度らしい。ということは20人の一人はワクチン接種をしても感染してしまうことになる。5%は統計法では「滅多に起こらないこと」の代名詞になっているので、高い確率ではない。しかし、低くもない。これまでの国内感染者は150万人強だから、単純計算しても(そう単純ではないかもしれないが)、国民全員がワクチンを接種していたとしても7.5万人は感染することになる。これまで一日の感染数が最も多い日は2万人くらいだから、同様に5%なら1000人だ。第二波とされた昨年の8月でもこの2倍には達していない。しかも、95%の有効性というのはワクチン以外の要因は統制しているはずだから、それ以外で感染につながる条件が加われば、効果は当然低くなる。

 

 例えばマスクである。マスクには飛沫の飛散も吸い込みも防止する相当の効果があるようだが、感染率についてのデータはネット情報で見ても2%から79%で、あまりに幅が広い。他の要因の影響が大きいのだろう。仮に50%とすれば、ワクチン接種によってマスクを外せばワクチンの効果は半減する(相乗でよいかは疑問があるが)。飲食場面など、特に問題となる場面で外す動機づけが強いと考えれば、ワクチンの効果はさらに限定的になるのではないか。

 

 ニュースになれば、それが頻度の高い現象だという印象を受ける(これを利用可能ヒューリスティックと呼ぶ)。しかし、珍しいからニュースになることを忘れてはいけない。これまでの感染者数の1/20程度にあり得る現象なのだ。淡々と対応しつづけなければならない。それ以上でも、それ以下でもない。

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