コラム124:コンパスは飾りじゃない!

 2001年以来、読図講習で多くの方と接してきた。そこでよく言われる言葉が「コンパスの使い方がよく分からない。コンパスが使えるようになりたい。」ところが、よく聞いてみると、彼らの多くが身につけたがっているのは、ベースプレートを使って設定した方向にまっすぐ進む「直進」という技術なのだ。

 

 確かに直進はシルバコンパスを代表とするベースプレートコンパスだからできるテクニックだ。身につければ「コンパスが使える」って感じがとってもする。だが、日本の山野で登山者が直進を必要とする場面がどのくらいあるだろう。年間おそらく1000回を超えるコンパス参照機会がある私でも、直進をするのは年間で数回あればいい方だろう。シルバコンパスは林の中を自由に進むことのできる地形・植生のスカンジナビアで、精度の高いナヴィゲーションのための道具として生まれたのだ。

 

 持っている道具のスペックを最高に引き出すテクニックを身につけたいのは当然の欲求だとしても、その副作用として本来のコンパスの使い方が身につかないのでは本末転倒だ。実際、山岳遭難の40%を占める道迷い遭難の一定数はコンパスの基礎的な使い方を身につけていれば間違いなく防げたと思う。日本の遭難対策史の転機となった愛知大学山岳部の薬師岳遭難でさえ、コンパスの適切な使い方を知っていれば防げた可能性がある。それもシンプルなコンパスで。

 

 日本という環境に適したコンパスの使い方をまず身につける。それがシンプルに導かれるコンパスが必要だ!多くの方と接する中でそう考え、最適なコンパスとしてシルバ社のマイクロレーサーをしばらく使ってきたが、廃版になってしまった。特別に頼んで1ロット作ってもらったが、さすがにそれももうできない。もともと子どものオリエンテーリング学習用のマイクロレーサーを登山で使うと、不都合なこともいくつかあった。それらを改良して、このほどオリジナルコンパスを作成した。

 

【詳細URL http://www.o-ajari.com/compass/#cc-m-product-9116428870】

 

 

 頼りなく思えるかもしれない。しかし、日本の普通の山行で必要な機能は十分備えている。もともとベースプレートコンパスが、日本の通常の山行ではオーバースペックだったのだ。それは高性能のロードレーサーのようなもの。自転車を乗れない人がいきなりロードレーサーで練習はしないだろう。危険すぎる。まずはままちゃりで自転車の乗り方を覚え、自転車を漕ぐ気持ちよさを知ることでロードレーサーの真価も分かり、安全に乗ることができる。まずはこの「ままちゃり」でコンパスの必要場面とありがたさを実感していただきたい。ベースプレートコンパスを買うのは、それからでも遅くない。いや、むしろその時こそがベースプレートコンパスを十全に使える契機なのだ。

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初心者に最適なコンパス、マイクロレーサー