コラム96 ドクタージェネラル

NHKドラマ番組「ドクタージェネラル」は、総合診療を行う熟達した医師が出会ったケースをドラマ風に再現し、病名をゲストと回答者の研修医に 答えさせる医療エンターテイメントだ。

 

毎回、劇的だが、原因がすぐには分からない症例が紹介される。しかし、それに取り組む熟達医の思考方向は実はかなり単純で、しかもどの回も驚くほど共通性が高い。

 

観察される症状から、そのような症状を呈する病名を挙げる。そして他の症状から、候補の中でありえない病名を消していく。絞り込んだ候補には、他の特徴でクロスチェックを掛ける。もちろん、その背後には、候補を挙げるために必要な症状の観察もさることながら、可能性のある症状をもれなく挙げることができる幅広い知識が必要だ。可能性のある症状をもれなく挙げていればこそ、こうした背理法的方法が有用なのだ。

 

初めてこの番組を見た時、彼らの発想法が熟達したオリエンテーリング競技者の行っている方法に酷似していくることに衝撃を受けた。これといった特徴の少ない自然環境でナヴィゲーションをするオリエンテーリング競技者は、「ここだ」と思った場所にこだわらず、考えられる候補地を列挙するところから思考をスタートさせることがある。候補地を列挙することで、それらを見分けるために注目すべき特徴に着目することができ、それによって、候補を効果的に絞りこんでいくことができるのだ。

 

両者が似ているのは偶然だろうか。そうではないと思う。両者が扱う対象の持つ類似性、すなわち、一目でこれと分かる特徴がなく、相互に弁別が難しい中で、限られた手がかりによってそのうちのどれがもっとも可能性が高いかを見極めるタスクという点で両者は共通しているからなのだろう。

 

私たちは、こうした複雑な課題を解くことができるという点で、素晴らしい認知能力を持っているが、それは無条件で可能なのではない。候補やその比較という外的な道具を通して、着眼点を活性化することができる。医療もナヴィゲーションも、顕著な特徴が乏しいという環境の制約と同時に、その環境を道具として使っている。

 

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