【M-nop letter+】2023年5月号

■ご挨拶■

 Mnopも早いもので設立18年目を迎えます。この間アウトドアの世界も少しづつ変化し、UTMFのような100マイルトレランが各地で開催されたり、マウンテンマラソンやロゲイニングといったナヴィゲーションスポーツも興隆してきました。当法人も主催イベントだけでなく、これらのイベントに安全管理や技術サポートという形で関わり、その発展を支えることができました。ここ2年ほどは、新しい会員さんも少しづつ登録されていることから、活動に関するニュースレターを発行することとなりました。当法人の活動についてご理解いただくとともに、アウトドア界の動向などもお伝えできればと思います。

■現在の活動■

 2年に1度開催(2023年5月27日開催)の「富士山麓ロゲイニング」の準備を進めています。街場でのロゲイニングは大流行りですが、大自然の中でのロゲイニングは数が限られています。本大会は2014年から静岡県立朝霧野外活動センターと共催で隔年で開催している大会となります。同じ月に12時間ロゲイニングがもう1大会開催されることもあり、エントリーは例年よりは低調です。ご興味ある方が周りにいらっしゃいましたら是非ご紹介ください。(エントリー締め切りは5月10日です)。

 また、当日運営にご参加ご希望がございましたら是非navi@m-nop.comまでお知らせください。仕事の内容はご自身のスキルに応じて相談となります。受付サポートのようにアウトドアのスキルをほとんど要求しないものから、撤収のように、自然の中で実際に体を動かしていただくものまであります。

 

 また、5月19日には総会を実施しますので皆様よろしくお願いいたします。ご欠席される場合は委任状の投函お忘れなく。

■今後の予定■

 年度後半の11月最終週には、同じく朝霧野外活動センター主催の「朝霧高原ロゲイニング」、また1月最終週には静岡市内での有度山トレイル三昧(トレイルランニングミニレースとロゲイニングの二日間イベント)も例年とおり実施予定です。

■最近の活動から■

【ナイト・ナヴィゲーション】

 オリエンテーリングに「ナイトオリエンテーリング」という種目がある。その名のとおり、視界が遮られる夜間にヘッドライトの明かりだけで行われる競技だ。

 

 オリエンテーリングをやり始めた少年のころは、「夜なんて・・・」と思っていた。暗闇の中でナヴィゲーションをすることには、現在でも不安はあるし、怖さもある。しかし、その怖さは今では適度な緊張感へと変わり、ナイトナヴィゲーションはゾーンに入る時間になりつつある。その理由いくつかある。

 

 もちろん、一番は自分の技量が上がったことだろう。技量が上がることで、見えているものだけではなく見えていないガイドラインになる特徴を使ってナヴィゲーションができるようになった。ヘッドライトのささやかな明かりの中でも、「行きすぎたら、××がある。」そう思えるだけで不安はコントロール可能な程度に低減する。

 

 難しそうに見えるポイントでも、地形のラインを使い単純化するとともに、その原則に従って動き、このあたりだろうと思ってヘッドライトを向けると、遙かに離れた場所で反射テープが光る瞬間は昼間では味わえない感覚だ。

 

 研究者として、様々な過酷な環境下でナヴィゲーションする人たちの研究資料を読み込んだ経験も大きい。この世界で有名なナヴィゲーションにミクロネシアの航海術がある。彼らは島影一つない大海原を、海図もGPSもなしで航海する。航海の失敗は死をも意味する過酷さだ。その彼らは、地図とコンパスの代わりに星の昇/沈む方位を使って進路を定め、プープと呼ばれる島の関係についての知識を使って航海をする。見えはしないが、知識を駆使して空間を囲うから、その中にいるという安心感を持てるのだろう。2015年にアメリカでのロゲイニングでナイト時間帯に入った時、入り組んだ沢は無限に長く感じられ不安だったが、左右には大きな尾根が、そして沢の行く先には見逃すはずのない林道があると考えて心を落ち着かせることができた。

 

 このゴールデンウィークも、夜間ナヴィゲーションのコースをイベントの番外編で走らせてもらった。晴天無風、気温も心地よかった。小径が曖昧になっても、トレースを踏み外して笹藪につっこんでも不安はなかった。コンパスで分かる方向と地形の手がかりが自分を守ってくれている。そんな気持ちにすらなる癒やし体験だった。ミクロネシアの航海術では、星を方向の手がかりにするため、夜間に出発することもあるという。もちろん、悪天候では出発しないだろう。彼らにとってもそれは冒険ではなく、癒やしの体験なのかもしれない、などと思いながら暗闇の中のトレイルをたどった。

 

参考:ミクロネシアの航海術のはなしは、秋道(2004)「水平線の彼方へ」野中健一編「野生のナヴィゲーション」古今書院に詳しい。この本では、そのほかにもイヌイット(エスキモー)、カラハリ砂漠の民、マレー半島のジャングルでのナヴィゲーションが、文化人類学者のフィールド調査も踏まえて紹介されている。また私も認知心理学の立場から、彼らのナヴィゲーションの原理についての考察を加えている。

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

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2015年3月のシンポジウムのプログラムと村越の発表資料を掲載しております。

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