なかなか活動に積極的になりにくい気候のこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか?
この間、村越は、山岳遭難関係のいくつかのイベントのコーディネーター/講師を務めました。毎年国立登山研修所で開催される講師の研修会では、アクティブラーニングの手法の勉強会の講師を務めました。登山の研修は基本的には現場での実技が中心です。それでも教えすぎたり、逆に「見て盗め」的な指導者の姿は今でも見られます。私もこれまでの研修会や同所が主催するオンラインセミナーや講演会で常々「考えさせる講習」の重要性を強調してきましたので、それを受けての講師登用だったのでしょう。
同所はいわば日本の山岳におけるナショナル・トレーニング・センター、そこに集う講師たちは日本屈指のプロガイドや登山家ですが、彼らにして「考えさせる講習は難しい・・・」。
◀熟達の講師陣にして、「考えさせるのは難しい・・・」その困難が安全な登山界につながることを期待したい。
そんな中で、翌週日本オリエンテーリング協会が主催しているナヴィゲーションインストラクターの養成講習会で、元秋田大学教育学部で教授論・教育方法を専門にしておられた浦野先生の、「(自分がほんとうは)いいたいことを(受講者に)言わせるように、問いかける」という言葉を改めて噛みしめました。
指導者も人間です。受講者に何か言えれば、自分が役に立っているという満足感を味わうことができます。受講者はその情報に満足するかもしれないが、自分の中にはなかなか落ちていかない。少し手を伸ばせば届きそうな答えを言わせてあげる問いが大事なのであり、指導者の力量が問われるところです。
会員の皆さんの中には指導的な立場を務める方も少なくないと思います。「いいたいことを言わせる問い」そんな工夫をしてみてはどうでしょうか?次のブログをお届けするころには、秋のアウトドアシーズンもすぐそこです。
当法人は、ナヴィゲーションスポーツの普及やアウトドアの安全のために、イベント、講習会の開催や大会への技術サポートを行っています。
本年度は、具体的には以下の行事を開催、協力していきます。
また、村越が関係する他団体の行事も掲載しました。
以下のうち、①有度山トレイル三昧、②オリエンテーリングin朝霧(朝霧野外活動センター主催)ではお手伝いいただけるスタッフの方を募集しています。①は特にスキル・知識は問いません。②では、ロゲイニング参加経験がある方を募集しています。
また、お手伝いではなく、運営や指導の勉強をしたい方も実費での参加を歓迎するイベントもあります。お問い合わせください。
【主催事業】
【協力・村越の参加】
毎年6月中旬には、前年の山岳遭難の状況が警察庁から発表されます。それを受けて、全国の遭難対策関係者300人以上が一堂に会して遭難対策を協議する場が、全国山岳遭難対策協議会です。かつては、各都道府県が持ち回りで、警察や消防の関連部署の慰安旅行的側面もなきにしもあらずでしたが、各県の負担軽減もあり、10年程前から東京での開催となっています。またコロナ禍には1年ブランクはあったものの、2021年からオンラインで、また2022年からはハイブリッドでの開催となっています。もともと密な議論は期待しにくい規模の中で、交通費や時間の節約になるハイブリッドは所轄官庁のスポーツ庁としても歓迎だったのかもしれません。村越はこの協議会のコーディネーターを2021年度から3年続けて拝命しました。オンラインの中で少しでも臨場感・参加感を出そうと、グーグルフォームなどを駆使して臨んだところが評価されてのご指名でした。
持ち回りの時には、開催県の山岳救助隊自慢のようなプレゼンも多く、遭難対策協議会とは言え、発生後の救助が中心の議論でした。しかし、漸増を続ける山岳遭難を背景に、地道な努力や工夫によって如何に防ぐかが重要なテーマになっています。このことは話題提供者のラインアップからも分かります。2021年こそコロナ対応に集中したものの、2022年には、ヤマップからマーケッティング戦略本部長の小野寺さんが「ビッグデータから導く「道迷い遭難ゼロ」への道」、群馬県警察本部の平林さんが、「コロナ禍での登山者の動向」、元ヤマケイの編集長の久保田さんが「道迷いと登山道整備」を話題にし、ワークショップやその後のパネルディスカッションも、これら多彩なパネリストにより白熱しました。
今年は、山岳団体に加盟していないいわゆる未組織登山者をメインターゲットに「自律した登山者になるためのデジタルリテラシー」をメインテーマに行われました。神奈川県警察本部の宇野さん、SNSを通じた東北の山の情報発信をしている梅田さん、登山用具店による情報発信を紹介したモンベルの設楽さんなど、スマホ全盛時代における登山におけるデジタル情報の光と影についての情報をたっぷり得ることができました。
中でも際立っていたのが、神奈川県警の宇野さん。「広報費ゼロですから」と自虐的に語りながらも、県警の近くでメディアの生中継をやっていると知るや、山岳救助の番組を売り込んだり、横浜港にある等身大ガンダムを利用して救助訓練をして人を集めたり、新聞の記者を招いて模擬登山をして記事にしてもらったりと、民間会社も顔負けの広報戦略。警察官僚にしておくにはもったいない!?おかげでパネルディスカッションも盛り上がりのうちに終えることができました。
当日の資料にその後のNHKラジオの取材に際して付け加えた、コロナ前後の山岳遭難数の変化が興味深いので、お示しします。
2020年(青)は、主要山岳県では大きな遭難数の減少があったが、神奈川など一部を除くと近郊でも遭難数はそう大きくは増えていません。その後2021、2022は首都圏を中心に気軽にいける山域での遭難が増えています。このボリュームのデータでは基本的には遭難は確率的に発生するので、遭難数の増加はほぼ同等の登山者(入山者)の増加と考えられます。新型コロナとその収束による登山者の動向が分かるデータです。
2022年の沖縄には、何か特殊な要因がありそう。