60歳代に入ってすぐの2020年、スロバキアでのマスターズに参加するつもりで、前年から準備を進めていました。ところがその目論見は新型コロナの流行であっけなく崩れました。スロバキアはその後2023年にリベンジで開催し、2020年のエントリー者は割引値段で参加できるというのでエントリーはしたものの、体調と忙しさで航空券の手配も気乗りしないままに、夏になってしまいました。
来年からは65歳のカテゴリー。5歳刻みでクラス分けがなされるマスターズは、チャンスは5年に1回か2回、その前にマスターズを経験しておきたい。そう思ってエントリーだけは済ませてこの春を迎えました。幸いにも「出たい!」という気持ちになって航空券も手配しました。2019年にカタルニャーのロゲイニング世界選手権に参加して以来、自分自身の遠征としては久しぶり。どんな世界が待っているのか楽しみに思えるこのごろです。ちなみに航空券もかなり価格が落ち着き、コロナ前に近い水準になりましたが、ロシアのウクライナの侵攻のため、直行便ですら13時間近くかかります。
短期の遠征ながら、WMOC後はスペインに飛んで、2日ほどトレーニングをします。来年のマスターズがバルセロナ周辺だからです。北欧はオリエンテーリングには楽しいが、物価も高いし、食事がねえ・・・。バルセロナは2019年のロゲイニング世界選手権でも訪れましたが、タパスでワイン!アフターも楽しみたいと思います。
※ 前号から追加された情報は以下の通りです。
当法人は、ナヴィゲーションスポーツの普及やアウトドアの安全のために、イベント、講習会の開催や大会への技術サポートを行っています。今後は、以下の行事を開催、協力していきます。また、村越が関係する他団体の行事も掲載しました。
以下で紹介する事業のうち、当法人主催事業の「有度山トレイル三昧」、朝霧野外活動センター主催の「初めてのナヴィゲーション」「オリエンテーリングin朝霧」ではお手伝いいただけるスタッフの方を募集しています。
また、お手伝いではなく、運営や指導の勉強をしたい方も実費での参加を歓迎するイベントもあります。お問い合わせください。
[以下3イベントの詳細はいずれも朝霧野外活動センターwebからご確認ください]
2~3月にかけて、フェイスブックなどでお知らせして、登山のリスクマネジメントに関する質問紙調査を実施しました。Mnopの会員の方でも、ご参加いただいた方がいると思います。ありがとうございました。この調査、興味深い結果が得られたので、報告方々、実際のリスクマネジメントにどんな示唆があるかを考えてみました。
これまでの登山家や南極観測隊の研究から、リスクマネジメントには①事前の確実な計画と準備、②現場でのリスク対応、③現場で状況が変化することを想定する対応(いわゆるプランBの策定)という3つの要素があると仮説を立て、それをデータで裏付けるために研究を実施しました。確実な計画と準備は、警察庁の山岳遭難の概況など、多くの資料でも指摘されている重要なポイントです。しかし、登山はリスクを受け入れる行為ですから、現場に持ち越されたリスクに対する対応も必要なはずです(②)。さらに、これまでの研究から、熟達者は現場での不確実性に備えて予め計画を立てている(③)ことが分かっています。①~③について各8~10個の質問を用意しました。
研究では、因子分析という統計的技法で、仮説通りのカテゴリーが得られるかを確認します。項目の選別を行ったところ、確かに、①事前の確実な準備、②現場でのリスク対応、③不確実性に備えたプランB、に関係する因子が得られましたので、各々の得点を算出しました。その平均値とSDを示したのが表1です。いずれも5件法の4に近い数値ですので、平均的にみて概ねできていると言えます。これは対象者がFBで呼びかけた方であり、比較的登山経験の多い方であったことにもよるのでしょう。
①~③と、経験、リスクマネジメントの自己評価の関係
質問紙ではこの他に、登山経験や登山のリスクマネジメント能力についての自己評価を聞きました。これらの関係を相関係数という指標で検討します。相関係数はAとBという二つの変数の関係が深いほど絶対値が大きく、最大値が1になります。0.7を超えると強い相関、0.4を超えると中程度の相関などと意味づけることもあります。また、統計的にみた時に、関係があると結論づけてほぼ誤りが無いがない場合を「有意」と呼び、0に近いほどその結論が確からしいことになります(表2)。
興味深いのは、経験や力量に関する3項目と①~③の関係です。登山経験・縦走経験は③の不確実性に備えたプランBとのみ有意な(1%以下)の相関が見られました。つまり、①事前の確実な計画・準備、②現場でのリスク対応、は登山の経験とは無関係でした。山のベテランは事前の計画を確実に立てたり、現場で出くわしたリスクにきちんと対応できるように思えますが、おそらくそれは経験によって身につけたものというよりも、個人のもともと持っていた特性による部分が大きいのでしょう(たとえば、几帳面である、とか、「臆病である」とか)。現場での用心深さに関係する③も同様です。一方で現場で不確実なことがあることを見越して、対応できる計画を事前に立てられることが、経験によって進化する部分だと言えます。
一方で、リスクマネジメント能力の自己評価は、①~③全てと概ね中程度の相関がありました。自分のリスクマネジメント能力を評価する時には、これら全てが意識されていることになります。ただし、この結果は見かけのものであり、重回帰分析という相互の影響を排除する別の統計手法を使うと、リスクマネジメントの自己評価に影響するのは、②がもっとも強く、ついで①であり、③は影響していない結果になりました。
①~③の経験との関連と考え合わせると、登山者は、元々持っている事前の計画性あるいは現場での用心深さをリスクマネジメント能力と考えており、経験によって向上する変動に対する柔軟性をリスクマネジメント能力としては認識していない可能性があります。この点を強調するとともに、その獲得に意識を向けることが山の安全に資すると言えそうです。