【M-nop letter+】2024年6月号

【目次】

■ご挨拶■

 60歳代に入ってすぐの2020年、スロバキアでのマスターズに参加するつもりで、前年から準備を進めていました。ところがその目論見は新型コロナの流行であっけなく崩れました。スロバキアはその後2023年にリベンジで開催し、2020年のエントリー者は割引値段で参加できるというのでエントリーはしたものの、体調と忙しさで航空券の手配も気乗りしないままに、夏になってしまいました。

 

 来年からは65歳のカテゴリー。5歳刻みでクラス分けがなされるマスターズは、チャンスは5年に1回か2回、その前にマスターズを経験しておきたい。そう思ってエントリーだけは済ませてこの春を迎えました。幸いにも「出たい!」という気持ちになって航空券も手配しました。2019年にカタルニャーのロゲイニング世界選手権に参加して以来、自分自身の遠征としては久しぶり。どんな世界が待っているのか楽しみに思えるこのごろです。ちなみに航空券もかなり価格が落ち着き、コロナ前に近い水準になりましたが、ロシアのウクライナの侵攻のため、直行便ですら13時間近くかかります。

 

 短期の遠征ながら、WMOC後はスペインに飛んで、2日ほどトレーニングをします。来年のマスターズがバルセロナ周辺だからです。北欧はオリエンテーリングには楽しいが、物価も高いし、食事がねえ・・・。バルセロナは2019年のロゲイニング世界選手権でも訪れましたが、タパスでワイン!アフターも楽しみたいと思います。

■現在・今後の活動■

※ 前号から追加された情報は以下の通りです。

当法人は、ナヴィゲーションスポーツの普及やアウトドアの安全のために、イベント、講習会の開催や大会への技術サポートを行っています。今後は、以下の行事を開催、協力していきます。また、村越が関係する他団体の行事も掲載しました。 

 

以下で紹介する事業のうち、当法人主催事業の「有度山トレイル三昧」、朝霧野外活動センター主催の「初めてのナヴィゲーション」「オリエンテーリングin朝霧」ではお手伝いいただけるスタッフの方を募集しています。

 

また、お手伝いではなく、運営や指導の勉強をしたい方も実費での参加を歓迎するイベントもあります。お問い合わせください。

【主催事業】

  • 静岡大学公開講座(共催)初級編(2024年12月8日)
    静岡大学と共催で実施される人気の講座。静岡の里山を歩きながら、読図の基礎を学びます。希望者には、日本オリエンテーリング協会によるナヴィゲーション検定ブロンズレベルを認定します。詳細は決まり次第お知らせします。
     
  • 静岡大学公開講座(共催)中級編(2025年3月8日)
    静岡大学と共催で実施される人気の講座。静岡の里山をハイキング形式で歩きながら、読図の実践力を高めます。希望者は翌日の検定に合格することで、日本オリエンテーリング協会によるナヴィゲーション検定シルバーレベルを認定します。詳細は決まり次第お知らせします。
  • 有度山トレイル三昧
    トレイルランニングミニレース(静岡市清水区、2025年1月25日)
    ロゲイニング(静岡市駿河区、2025年1月26日)
    当法人のフラッグシップイベントです!2025大会は清水地区を中心にコース設定予定。交通も至便です。

【他団体による主催(協力・村越の講師参加等)】

  • 国立登山研修所:オンラインセミナー
    コロナ禍からスタートした国立登山研修所のオンラインセミナー、今年は村越がリスクマネジメント1回と読図4回の5回シリーズを担当します。
    村越担当の日程と内容は以下のとおりです。
    (6月27日の第一回は、北村先生の登山の基本的な考え方(PDCA))です。)
    第二回:7月25日 リスクマネジメント:登山安全計画の作り方
    第三回:8月30日 読図「礎」の巻
    第四回:9月27日 読図「画」の巻
    第五回:11月1日 読図「按・識」の巻
    第六回:11月29日 読図「践」の巻
    第三回から第五回はお気づきの方もいると思いますが、宮本武蔵の五輪書を意識しました。礎は基本、画とは計画、事前に何をどう読むか?そして按とは按針の言葉から分かるように、進路を定めること、識とは目印を立てて理解すること、すなわち現在地把握。つくづく漢字とは凄いと思います。漢字を手がかりに、ナヴィゲーションの基礎をしっかりみにつけてください。以下のURLで1ヶ月くらい前から申し込み可能です。
    https://www.jpnsport.go.jp/tozanken/syusai/tabid/158/Default.aspx

  • Shin Murakoshi: 50 years with Orienteering
    村越のオリエンテーリング生活50周年を記念したオンライントーク
    全5回+番外編全ての配信が終了しました。
    https://www.orienteering.or.jp/joa-about/online/murakoshi_o_50th/
    このURLから、Youtubeにアップされたアーカイブをご覧いただけます。
村越真オリエンテーリング生活50周年記念オンライン講座トップバナー
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[以下3イベントの詳細はいずれも朝霧野外活動センターwebからご確認ください]

https://asagiri.camping.or.jp/

  • はじめてのナヴィゲーション(技術協力)
    (主催:朝霧野外活動センター、2024年9月7~8日)
    親子で地図を使ったナヴィゲーションの挑戦する超人気イベント。昨年は3倍の競争率だったとか。
    ※ お手伝いいただける方を募集しています(交通費補助と薄謝進呈)。
  • オリエンテーリングin朝霧
    (主催:朝霧野外活動センター、2024年11月23~24日)
    10年以上続く、本格的ナヴィゲーションも含むイベント。
    ※ お手伝いいただける方を募集しています(交通費補助と薄謝進呈)。
  • 野外活動指導者養成講習
    (主催:朝霧野外活動センター、2025年2月9~11日)
    名称はややクラシカルですが、前半はナヴィゲーション講習、後半は日本の野外でのリスクマネジメントの中村正雄先生による講習という1度で二度おいしい講習。公共施設ならではの参加費の安さも魅力。

【おまけ】

  • 冬のアジア選手権
     今年のアジア選手権は12月にタイで開催です。タイ?ジャングルじゃないの?と思う人も多いことでしょう。実際私もそれを危惧していました。しかし、開催地チェンマイ(タイ北部の古い都市)はサバナ気候なのです。森の中は乾燥しており、林床も日本の里山に近い雰囲気で良好な可能度です。おまけに道の多くない微地形です。またスプリントにはうってつけの都市公園もあります。これまでのどのアジア選手権にも劣らないレースが楽しめるはずです。さらに、12月のタイは乾期、そして気温も理想的な14-28度くらい。
     アジア選手権というと「関係ない!」と思われるかもしれませんが、毎回一般向けのクラスが用意されています。クリスマスを南国でリゾート気分で過ごしてみませんか?この円安のご時世、滞在費や食費も比較的リーズナブルで、日本でもお馴染みのタイ料理、マッサージなども楽しめます。
地図調査は香港出身のChui氏が担当。仏教寺院の中でテントで寝泊まりしながらの地図調査!
地図調査は香港出身のChui氏が担当。仏教寺院の中でテントで寝泊まりしながらの地図調査!
タイと言えばタイ料理。おいしい料理も遠征の楽しみ!
タイと言えばタイ料理。おいしい料理も遠征の楽しみ!

■最近の活動から■

【リスクマネジメントの実践知】

 2~3月にかけて、フェイスブックなどでお知らせして、登山のリスクマネジメントに関する質問紙調査を実施しました。Mnopの会員の方でも、ご参加いただいた方がいると思います。ありがとうございました。この調査、興味深い結果が得られたので、報告方々、実際のリスクマネジメントにどんな示唆があるかを考えてみました。

 

 これまでの登山家や南極観測隊の研究から、リスクマネジメントには①事前の確実な計画と準備、②現場でのリスク対応、③現場で状況が変化することを想定する対応(いわゆるプランBの策定)という3つの要素があると仮説を立て、それをデータで裏付けるために研究を実施しました。確実な計画と準備は、警察庁の山岳遭難の概況など、多くの資料でも指摘されている重要なポイントです。しかし、登山はリスクを受け入れる行為ですから、現場に持ち越されたリスクに対する対応も必要なはずです(②)。さらに、これまでの研究から、熟達者は現場での不確実性に備えて予め計画を立てている(③)ことが分かっています。①~③について各8~10個の質問を用意しました。

 

 研究では、因子分析という統計的技法で、仮説通りのカテゴリーが得られるかを確認します。項目の選別を行ったところ、確かに、①事前の確実な準備、②現場でのリスク対応、③不確実性に備えたプランB、に関係する因子が得られましたので、各々の得点を算出しました。その平均値とSDを示したのが表1です。いずれも5件法の4に近い数値ですので、平均的にみて概ねできていると言えます。これは対象者がFBで呼びかけた方であり、比較的登山経験の多い方であったことにもよるのでしょう。

 

①~③と、経験、リスクマネジメントの自己評価の関係

 質問紙ではこの他に、登山経験や登山のリスクマネジメント能力についての自己評価を聞きました。これらの関係を相関係数という指標で検討します。相関係数はAとBという二つの変数の関係が深いほど絶対値が大きく、最大値が1になります。0.7を超えると強い相関、0.4を超えると中程度の相関などと意味づけることもあります。また、統計的にみた時に、関係があると結論づけてほぼ誤りが無いがない場合を「有意」と呼び、0に近いほどその結論が確からしいことになります(表2)。

 

 興味深いのは、経験や力量に関する3項目と①~③の関係です。登山経験・縦走経験は③の不確実性に備えたプランBとのみ有意な(1%以下)の相関が見られました。つまり、①事前の確実な計画・準備、②現場でのリスク対応、は登山の経験とは無関係でした。山のベテランは事前の計画を確実に立てたり、現場で出くわしたリスクにきちんと対応できるように思えますが、おそらくそれは経験によって身につけたものというよりも、個人のもともと持っていた特性による部分が大きいのでしょう(たとえば、几帳面である、とか、「臆病である」とか)。現場での用心深さに関係する③も同様です。一方で現場で不確実なことがあることを見越して、対応できる計画を事前に立てられることが、経験によって進化する部分だと言えます。

 

 一方で、リスクマネジメント能力の自己評価は、①~③全てと概ね中程度の相関がありました。自分のリスクマネジメント能力を評価する時には、これら全てが意識されていることになります。ただし、この結果は見かけのものであり、重回帰分析という相互の影響を排除する別の統計手法を使うと、リスクマネジメントの自己評価に影響するのは、②がもっとも強く、ついで①であり、③は影響していない結果になりました。

 

 ①~③の経験との関連と考え合わせると、登山者は、元々持っている事前の計画性あるいは現場での用心深さをリスクマネジメント能力と考えており、経験によって向上する変動に対する柔軟性をリスクマネジメント能力としては認識していない可能性があります。この点を強調するとともに、その獲得に意識を向けることが山の安全に資すると言えそうです。

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

活動をサポートして下さる方を募集しています

2015年3月のシンポジウムのプログラムと村越の発表資料を掲載しております。

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