【M-nop letter+】2024年9月号

【目次】

■ご挨拶■

 地震と台風に翻弄された8月が終わりました。臨時情報の発令は防災を研究テーマとする私にとっては、社会がどう反応するかを知る興味深い機会だったのですが、残念なことに、久しぶりの北欧遠征をしていました。

 

 そう、本当に久しぶりでした。OMMやロゲイニングでは、コロナ禍前はほぼ毎年のようにヨーロッパにでかけていましたが、オリエンテーリングでの遠征は2010年以来。フィンランドに至っては2001年の世界選手権出場以来の遠征でした。

 

 ターゲットの大会はワールドマスターズオリエンテーリング選手権(WMOC)、毎年開催される35歳以上のアスリートのための世界選手権です。35歳以上だろうがなんだろうが、世界チャンピオンには変わりありません。実際、オリエンテーリングの世界ではかつての世界チャンピオンや世界選手権上位の常連も出場しており、今年のM65では、91年95年に世界チャンピオンになったヨルゲン・モルテンソンも参加し、65歳以上の世界チャンピオンに返り咲いていました。

 

 参加して、改めて(北欧での)オリエンテーリングの面白さ、そして競技のために全力の尽くせる時間の喜びを再認識しました。そして最高齢クラスはW95。97歳のアスリートは誰にも負けない声援を受けながらフィニッシュレーンを走って(!)いた姿が印象的でした。長生きすればするほどチャンピオンになる可能性が高まる!

 

来年のマスターズは食文化の国スペイン、再来年はポーランド、そして2027年は日本開催です。皆さんも世界チャンピオンを目指してみませんか?

フィニッシュレーンを走り、喝采を浴びるW95の選手。97歳というから、この場に来て森を走るだけでもすごい。
フィニッシュレーンを走り、喝采を浴びるW95の選手。97歳というから、この場に来て森を走るだけでもすごい。

■現在・今後の活動■

※ 前号から以下のイベントを追加、変更しました。

当法人は、ナヴィゲーションスポーツの普及やアウトドアの安全のために、イベント、講習会の開催や大会への技術サポートを行っています。今後は、以下の行事を開催、協力していきます。また、村越が関係する他団体の行事も掲載しました。 

 

以下で紹介する事業のうち、当法人主催事業の「有度山トレイル三昧」、朝霧野外活動センター主催の「初めてのナヴィゲーション」「オリエンテーリングin朝霧」ではお手伝いいただけるスタッフの方を募集しています。

 

また、お手伝いではなく、運営や指導の勉強をしたい方も実費での参加を歓迎するイベントもあります。お問い合わせください。

【主催事業】

  • 静岡大学公開講座(共催)初級編(2024年12月8日)
    静岡大学と共催で実施される人気の講座。静岡の里山を歩きながら、読図の基礎を学びます。希望者には、日本オリエンテーリング協会によるナヴィゲーション検定ブロンズレベルを認定します。詳細は決まり次第お知らせします。
     
  • 静岡大学公開講座(共催)中級編(2025年3月8日)
    静岡大学と共催で実施される人気の講座。静岡の里山をハイキング形式で歩きながら、読図の実践力を高めます。希望者は翌日の検定に合格することで、日本オリエンテーリング協会によるナヴィゲーション検定シルバーレベルを認定します。詳細は決まり次第お知らせします。
  • Shin Murakoshi オリエンテーリング・キャリア50周年記念事業
    マウンテンオリエンテーリング
    (埼玉県飯能市等、2024年10月5日・TEAM阿闍梨と共催)
    飯能氏は競技オリエンテーリング黎明期のメッカ。村越も、競技オリエンティアとしての一歩をそこで踏み出した。第一回全日本大会で優勝した七国峠を始め、高麗丘陵、朝日山等村越とオリエンテーリングにとっての思い出の地を巡るマウンテンオリエンテーリング。
    (詳細は、https://www.teamajari.com/event/shinmurakoshi50/241005/)
オリエンテーリング黎明期のテラインである高麗峠を日和田山山頂より望む。鳥居のすぐ左に見えているのが、有名な巾着田。
オリエンテーリング黎明期のテラインである高麗峠を日和田山山頂より望む。鳥居のすぐ左に見えているのが、有名な巾着田。
やはり初期のオリエンテーリングにおいてメッカとも言える多峰主の山頂より天覧山のテラインと飯能市街を眺める。遠くの丘陵地は、加治丘陵、七国峠で、パーマネントコースが設置され、第1回の全日本大会も開催された(七国峠)
やはり初期のオリエンテーリングにおいてメッカとも言える多峰主の山頂より天覧山のテラインと飯能市街を眺める。遠くの丘陵地は、加治丘陵、七国峠で、パーマネントコースが設置され、第1回の全日本大会も開催された(七国峠)
  • 有度山トレイル三昧
    トレイルランニングミニレース(静岡市清水区、2025年1月25日)
    ロゲイニング(静岡市駿河区、2025年1月26日)
    当法人のフラッグシップイベントです!2025大会は清水地区を中心にコース設定予定。交通も至便です。

【他団体による主催(協力・村越の講師参加等)】

  • 国立登山研修所:オンラインセミナー
    コロナ禍からスタートした国立登山研修所のオンラインセミナー、今年は村越がリスクマネジメント1回と読図4回の5回シリーズを担当します。
    すでに第二回のリスクマネジメントの回は終了しました。この後、第三回~六回の4読図シリーズを担当します。村越担当の日程と内容は以下のとおりです。
    【終了】(6月27日の第一回は、北村先生の登山の基本的な考え方(PDCA))でした。)
    【終了】第二回:7月25日 リスクマネジメント:登山安全計画の作り方
    【終了】第三回:8月30日 読図「礎」の巻
    第四回:9月27日 読図「画」の巻
    第五回:11月1日 読図「按・識」の巻
    第六回:11月29日 読図「践」の巻
    第三回から第五回はお気づきの方もいると思いますが、宮本武蔵の五輪書を意識しました。礎は基本、画とは計画、事前に何をどう読むか?そして按とは按針の言葉から分かるように、進路を定めること、識とは目印を立てて理解すること、すなわち現在地把握。つくづく漢字とは凄いと思います。漢字を手がかりに、ナヴィゲーションの基礎をしっかりみにつけてください。以下のURLで1ヶ月くらい前から申し込み可能です。
    https://www.jpnsport.go.jp/tozanken/syusai/tabid/158/Default.aspx
  • オリエンテーリングin朝霧
    (主催:朝霧野外活動センター、2024年11月23~24日)
    10年以上続く、本格的ナヴィゲーションも含むイベント。
    ※ お手伝いいただける方を募集しています(交通費補助と薄謝進呈)。
    ※ 詳細は朝霧野外活動センターwebからご確認ください。
  • 野外活動指導者養成講習
    (主催:朝霧野外活動センター、2025年2月9~11日)
    名称はややクラシカルですが、前半はナヴィゲーション講習、後半は日本の野外でのリスクマネジメントの中村正雄先生による講習という1度で二度おいしい講習。公共施設ならではの参加費の安さも魅力。
    ※ 詳細は朝霧野外活動センターwebからご確認ください。
  • ナヴィゲーションフェスタ
    (主催:静岡大学地域スポーツ研究会、11月23日)
    大学の持つスポーツ資源を地域に提供し、豊かな地域作りに貢献する静岡大学の一連の事業に参加します。大学から至近の静岡市立大谷小学校での校内オリエンテーリング、ラビリンスオリエンテーリングを実施。ボランティアスタッフ募集中。
小学校の校庭でラビリンスオリエンテーリングに何度も挑戦する近隣の子ども。
小学校の校庭でラビリンスオリエンテーリングに何度も挑戦する近隣の子ども。
校内オリエンテーリングでガチになる大学生たち。最後には併設の消防車展示のために来ていた消防職員が「出身校ですから」といって、これまたガチに挑戦
校内オリエンテーリングでガチになる大学生たち。最後には併設の消防車展示のために来ていた消防職員が「出身校ですから」といって、これまたガチに挑戦

■最近の活動から■

【マスターズクラス】

 挨拶でも触れたマスターズについて詳しくご紹介しましょう。

 

 1983年にフィンランドでベテランワールドカップの名称でスタートしたこの大会は1998年にワールドマスターズ選手権と改称され、今日に至っています。オリエンテーリングの世界では、昔から5歳刻みの年齢毎のカテゴリーが設定され、同年代と競い合う大会にはなじみがありましたが、それに年代ごとの世界チャンピオンという付加価値が加わったのです。

 

 私もベテランワールドカップの時代である1997年に一度参加しました。この年は「フル代表」とも言える普通の世界選手権にも参加し、ロング、ミドルともに予選を通過した絶好調の年でした。ベテランワールドカップでも5位となり、俄然世界チャンピオンが現実のものとして見えてきました。

 

 5歳刻みでカテゴリーが決まるこの大会、0歳と5歳の年が狙い目で、私にとっては0年と5年となります。2020年の60歳の年に狙いを定めて、エントリーもしたし、南極でのトレーニング(2018年の12月2020年の3月まで南極観測での越冬を予定)まで考えていました。それがよもやのコロナ禍。64歳になる今年はノーチャンスではあるものの、来年のチャンスに向けての実力試しという位置づけで、今年のフィンランドに遠征したのです。

 

 現在マスターズでは、スプリントの予選・決勝、フォレストの予選とミドル決勝、ロング決勝が行われます。ヨーロッパで開催される際の参加者は3000人から4000人。MW60~MW65では概ね各クラス400人くらいが参加します。従って予選は5ヒート程度に分かれ、各ヒート約80人中16人がA決勝に進み、次の16人がB決勝・・・となり、M60はE決勝まで、M65にいたってはF決勝まであります。また、フォレストではミドルの決勝で入れ替えがあり、A決勝で下位12人になるとロング決勝はBに「降格」という厳しさです。私は、事前の地図読み練習とかろうじて一ヶ月間できたスピード練習も奏功して、スプリント、フォレストともにA決勝を走ることができました。おかげで、北欧でのオリエンテーリングをたっぷり楽しむことができました。

 

 

私と落合志保子は、スプリント・フォレストともA決勝を走ることができた
私と落合志保子は、スプリント・フォレストともA決勝を走ることができた

 

 もちろん、マスターズの楽しみは勝つことだけではありません。用意される世界最高峰の地図で世界各地のテレインで毎年走ることができることは、マスターズ年代のオリエンティアにとっては、得がたい楽しみです。また日本人の同年代と一緒の遠征は、同窓会的楽しみでもあります。私のように、毎年のように世界選手権に出ていた人間には、当時知り合ったトップ選手の幾人かは今もオリエンテーリングを続けています。それを見ることは、励みにもなります。年配のオリエンティアにとっての「楽しい同窓会」、マスターズはそういう大会なのです。

 

1980-90年代世界選手権をともに走ったスウェーデンのヨルゲン・モルテンソンとともに
1980-90年代世界選手権をともに走ったスウェーデンのヨルゲン・モルテンソンとともに

 最後に北欧でのオリエンテーリングについて少し説明します。北欧と総称されますが、オリエンテーリング発祥地のスカンジナビア(ノルウェーとスウェーデン)に加えてフィンランドは、いずれも氷河の氷食作用によって形成されたテレインで、氷河に削られることで出来た、比較的平坦で、しかし岩盤が浸食され、その残存物である岩や岩がけを特徴とするオリエンテーリングに格好の地形なのです。その中で大事なことは地図から読みとるだけでなく、不要な情報は捨てること、本当に重要で分かる情報を選んで使っていくことなのです。

 

 

 出発前にほとんど練習できなかった私は、公表された現地の地図を使い、ほぼ毎日のように仮想地図読みをしながらのランニングを行ってきました。結果、23年ぶりのフィンランドでのオリエンテーリングながら、複雑な地図読みに順応することができましたし、結果的にも手応えのあるものとなりました。

フィンランドの森
フィンランドの森
フォレストミドル決勝の地図
フォレストミドル決勝の地図
スプリントの地図。フィンランド第2の年ツルクの大学キャンパスとその周辺で行われた
スプリントの地図。フィンランド第2の年ツルクの大学キャンパスとその周辺で行われた

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

活動をサポートして下さる方を募集しています

2015年3月のシンポジウムのプログラムと村越の発表資料を掲載しております。

初心者に最適なコンパス、マイクロレーサー