【M-nop letter+】2025年01月号

【目次】

■ご挨拶■

 2025年、新年明けましておめでとうございます。

 昨年は2020年以来のコロナ禍も収束し、久しぶりに心置きなく活動できた一年となりました。有度山トレイル三昧をはじめとして、MF100マイル、OMM-Japan、オリエンテーリングin朝霧など多くのナヴィゲーション/アウトドアイベントを支援して参りました。本法人Mnopの名前の由来である。Map、Navigation、Orienteeringの深まりを感じることのできる1年となりました。皆様には、この間、本法人の活動を直接・間接にご支援いただきありがとうございました。新しい会員の皆様をお迎えできたことも嬉しく思います。

 

 2005年12月に本法人が設立して以来、今年は20周年を記念する年となります。5月には富士山麓12時間ロゲイニング、2026年1月には有度山トレイル三昧を予定しています。その他にも例年通り、朝霧野外活動センターでの「初めてのナヴィゲーション」(9月)、「オリエンテーリングin朝霧」(11月)のコース設定をお手伝いする他、MF100マイル、OMMの安全管理業務も受託予定です。

 

 ナヴィゲーション技術の講習に関しては、知識提供によりすでに日本オリエンテーリング協会で制度化が進み、毎年10人以上の指導員の養成と100人を超えるスキル検定が定着してきました。本年度は新たな事業として、アウトドアにおけるリスク対応についての技術提供を計画しています。個々の大会運営はもちろん、こうした技術提供事業にも皆様の積極的な参加をお待ちしています。

 

 来るべき年が皆様にとって、実り多くなることを祈りまして、新年のご挨拶と致します。

■現在・今後の活動■

詳細は「現在・今後の活動のご紹介 」からご覧いただけます。

<主催事業>

  • 静岡大学公開講座 初級編・中級編
  • 有度山トレイル三昧2025【スタッフ募集】
  • オンライン講演「こんなに楽しい国際大会」 new
  • 富士山麓12時間ロゲイニング【スタッフ募集】 new
  • 有度山トレイル三昧2026【スタッフ募集】 new

<他団体による主催(M-nop協力・村越の講師参加等)>

  • 野外活動指導者養成講習
  • 初めてのナヴィゲーション new
  • オリエンテーリングin朝霧 new

■最近の活動から■

【南国の魅力:タイでのアジア選手権(その1)】

 アジア選手権が2018年以来6年ぶりに開催されました。今回特筆すべきはタイでの開催となった点です。2008年以来開催された11回のアジア選手権は、韓国、日本、中国、カザフスタン、台湾、香港、とカザフスタンを除くと全て東アジアで開催されてきました。今回初めての東南アジアでの開催となりました。

 

 東南アジアというと、皆さんどんなイメージをお持ちでしょうか。熱帯雨林、酷暑、未開のジャングルの中の野生動物。とてもオリエンテーリングに適した場所とは思えないイメージばかりではないでしょうか。2年前にタイからの希望があった時には私自身、そんなイメージでした。そもそもテレインがないだろう。ほぼ道走りのオリエンテーリングになるだろう。危険な野生生物への配慮も必要だろう。正式にタイからのオファーを受諾できるかどうかを確認に、恐る恐る下見に出かけたのが2023年の1月でした。

 

 最初の訪問で、私のイメージは一新しました。それと同時にこれはエキサイティングな大会になるに違いない。そんな確信さえ覚える最初の訪問でした。開催地チェンマイはタイ第2の古都。冬は乾期で天気もよく、気温は14-28度と、トップ選手にはやや暑いものの、滞在には絶好の気候です。森の中も比較的乾燥しており、蚊やかみつくアリがいるもののきもちの悪い生き物には出会いません。そもそもチェンマイは熱帯ではありますが、熱帯雨林気候ではなく、比較的乾燥したサバナ気候なのです!高校の地理で習った知識が、私の心を落ち着かせるのに役立ちました。

 

 こうした気候条件から、欧州等からの避寒のリゾートとしても有名です。高級から中級までのホテルからホステルまで幅広いレベルの宿泊施設が建ち並び、旅行客の受け入れも慣れている様子がうかがえます。テレインがあり、旅行客の受け入れに慣れたホテルがあれば、後は技術的な面さえクリアできれば、よいのです。もちろんそれは重要かつ骨の折れる作業ですが、コントロールが十分できる範囲のことではあります。

 

 2008年の韓国での第一回アジア選手権が開催される時、韓国にはすでにそれなりのオリエンテーリング愛好者がいましたが、本格的な国際大会の経験はありませんでした。競技の核となる部分は概ね日本からの支援者が担当しました。今回のタイには愛好者の蓄積はほとんどないので、競技の中核に加え、ボランティアとなる多くのスタッフの教育も必要だろう。オリエンテーリングでもっとも重要な地図作成はどうするだろう?韓国の時もそうでしたが、お金で解決するしかない・・・。大きなハードルはありますが、それらはいずれも視野の範囲にあるものでした。

 

 24年になって正式の国際連盟のイベントアドバイザーに就任し、技術面の査察をすることになりました。地図作成は、香港のプロの作成者に依頼することが決まっていました。1月に一緒に森に入り、確認したところ、主任マッパーのチュー(香港)は単に技術的な力量に優れているだけでなく、国際的な地図記号図式についても深く理解していました。これでハードルは一つ通過です。

地図を作成したチューは、当初は予算節約のため寺院のパーゴラの下に張ったテントに泊まりながら地図調査をしていた。
地図を作成したチューは、当初は予算節約のため寺院のパーゴラの下に張ったテントに泊まりながら地図調査をしていた。

スプリントのコースは彼が作成する。森の種目であるリレーとミドルについては、日本の落合さんにプランナーを依頼することになりました。オリエンテーリングのコースも、技術とテレインに関する深い理解を必要とする熟達が必要な作業です。スケジュール的にタイトであると同時に、現地に技術が分かる人間がいない中でハードな作業になることは分かっていましたが、二人の熟達したプランナーを得ることで、スタートからフィニッシュまで、つまり選手権に必要な競技の質を保つことができる目処が立ちました。

プランナーをお願いした落合さん(左)とアシスタントイベントアドバイザーを務めてくれたシンガポールのユージン。
プランナーをお願いした落合さん(左)とアシスタントイベントアドバイザーを務めてくれたシンガポールのユージン。

 その後、イベントアドバイザーとして5月、10月にも訪問し、準備の進捗を見守りました。また、メール等を使って、日本からも公式情報の確認、地図やコースの準備状況の確認。大会が近づくとオンラインでのミーティングでの進捗管理なども行いました。コロナ禍は世界に多くのダメージを与えましたが、オンラインで世界中の人とミーティングが気軽に開催できるようになったことは、重要なレガシーでした。それなしでは、遠い日本から準備状況をやきもきしながら見守るしかなかったでしょう。

事前訪問時にタイの運営チームと。一番左の男性(ビル)が現地で唯一オリエンテーリングを知るスタッフ。そのほかの若いスタッフにオリエンテーリングやその大会準備の要点をレクチャーするのだが、当日になるまでどんなスタッフが何人くるのか分からない。その上、2回行ったセミナーに来たスタッフ候補はいずれも当日には現れないなど、文化や社会の仕組みの根底から、頼れるものが何かを模索する日々。得られた結論は、その場にあるもの以外は何一つ確認なしには信頼できない。
事前訪問時にタイの運営チームと。一番左の男性(ビル)が現地で唯一オリエンテーリングを知るスタッフ。そのほかの若いスタッフにオリエンテーリングやその大会準備の要点をレクチャーするのだが、当日になるまでどんなスタッフが何人くるのか分からない。その上、2回行ったセミナーに来たスタッフ候補はいずれも当日には現れないなど、文化や社会の仕組みの根底から、頼れるものが何かを模索する日々。得られた結論は、その場にあるもの以外は何一つ確認なしには信頼できない。

 大会は12月21日~25日の5日間の日程で開催されました。第一戦のスプリント種目で、立ち入り禁止区域のコントロールが甘く、選手には割り切れない思いを残してしまいましたが、なんとか競技を成立させると同時に、ミドルやリレーの森の種目では、運営もスムースになり、選手たちにも楽しく質の高いアジア選手権を楽しんでもらえたと思います。

当日の運営の詳細もドラマの連続ですが、長くなりますので、この点については来月号のブログでお伝えします。

それでも運営が楽しかったのは、常春の気候に加えて食事のおいしさがある。タイの名物スイーツであるマンゴライスは、最初にごちそうしてもらった時には「意味が分からない」と思っていたが、一度食べたらやみつきになった。食事もおいしい。写真はいわゆるガチタイ料理の類いだろうが、ガチ中華が日本の中華料理とはかなり違うのに対して、ガチタイ料理は全く違和感がない。
それでも運営が楽しかったのは、常春の気候に加えて食事のおいしさがある。タイの名物スイーツであるマンゴライスは、最初にごちそうしてもらった時には「意味が分からない」と思っていたが、一度食べたらやみつきになった。食事もおいしい。写真はいわゆるガチタイ料理の類いだろうが、ガチ中華が日本の中華料理とはかなり違うのに対して、ガチタイ料理は全く違和感がない。

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

活動をサポートして下さる方を募集しています

2015年3月のシンポジウムのプログラムと村越の発表資料を掲載しております。

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