1月末には、本法人のフラッグシップイベントが終了しました。ご協力いただいた会員の皆様、ありがとうございました。
トレランでは、今回から旧来のロング種目に周回部分をもう一回りした13.5kmのロングを新設しました。心配したような渋滞もなく、参加者の皆様にはジェットコースターコースを十二分に堪能いただいたようです。スケジュールもやや集合時間をコンパクトにし、コース閉鎖を30分程度遅らせることで対応できました。
トレランでは、事故が一件発生しました。コース上の頭上近くにあった木に参加者がぶつかり出血するという事故です。頭を打って、一瞬意識が低かったので救急搬送となりました。検査の結果は特に問題ありませんでしたが、本イベント初の搬送事故となりました。比較的搬送もしやすい場所であり、参加者の方の応援もいただきスムースに対応できましたが、今後の救急対応への充実についてのよい教訓となったできごととなりました。
ロゲイニングは、2022年にコロナ禍で準備しながらも、中止を余儀なくされたコースをベースに、さらにエリアを拡張して、久しぶりの清水エリアでの実施となりました。古来、人的・物資的に交流の街であった清水に因んだポイントを設定しました。地元の方からも「知らなかった」というポイントを提供できました。
初の試みとして、清水港の水上バス、ロープウェーに加えてバス全線もOKとしました。CPは随所に散らばっているので、上位から中位のチームはバス利用の影響は限定的ですが、同時に走力のない家族組などにも幅広いポイントを楽しんでもらうことも意図しました。結果として安心して参加していただけたようです。これまでであれば家族や走力のないチームはいけなかったCPにも訪れることができたようで、好評でした。女子5時間優勝の「くうねる酒場」は、バス、水上バス、ロープウェー全てを使ったプランナーの想定を超えた作戦でした。
残念ながら、ロゲイニングでも救急搬送するけがが発生してしまいました。こちらは何の変哲もない舗装道路での転倒時に手がでなかったことから、顔面とひざにかなりのけがをした事例です。さいわい、こちらも大事には至りませんでした。
有度山トレイル三昧は来年も一月最終週を予定しています。来年はまた駿河区に戻り、安倍川周辺のエリアを考えています。
詳細は「現在・今後の活動のご紹介 」からご覧いただけます。
<主催事業>
<他団体による主催(M-nop協力・村越の講師参加等)>
アジア選手権の報告を続けます。
今回の種目は2種目、公園でのスプリント(優勝設定15分)、森でのミドル(優勝設定35分)です。
スプリントは、チェンマイ西方のローヤル・ラジャプルエクという公園で行われました。その名の通り、王室が世界園芸博覧会のために作った公園です。地図から分かるように、公園の中には出展国の様式による庭園がパビリオン替わりに建設されており、細かい園路や障害物など、パークにはうってつけの公園でした。
公園には大きなホールなどもあり、スタート前の隔離エリアやフィニッシュ後の開会式・レセプションなど、運営上も完璧な場所でした。現地のボランティアスタッフは当日まで打ち合わせる機会はないことは分かっていましたし、経験のない彼らが書類だけでスタート方式やその肝を理解できるとは思えません。我々の中では、「これはもう現地でやりながら教育していくしかない」という点で意見は一致していました。
スプリントでは、好都合なことに一般クラスが先にスタート、その後選手権クラスがスタートでした。一般クラスには申し訳ないが、実験台になっていただきました。何人かの選手には、スタート枠での誘導がうまくいかず、ぎりぎりでスタート枠にスタンバイ、あるいは位置説明を取り忘れて、スタート直前に「位置説明はどこ?」といった混乱に遭わせてしまいました。しかし、その後の選手権クラスのスタートは比較的スムースでした。これは選手権の選手たちが、こうしたスタート方式に慣れており、3分間のスタート前の各枠の中で何をすべきか、公式情報からしっかり読みとっているためでもあります。
結局私は、最初から最後までスタートに張り付き、選手のスタート時刻が間違っていないかを全てチェックするという、本来業務でないことをすることになりましたが、これも全くの想定内です。
スプリントのフィニッシュはこの公園の中央部に象徴的に立っている寺院へのアプローチ路でした。
ビジュアル的には満点のフィニッシュでレースは無事終わりました、といいたいところですが、日本チームから調査依頼がありました。通行が禁止されている部分が、実際には通れるようになっており、そこを通過した選手がいるので、特定して失格としてほしいというものでした。スプリントではこういう事態はしばしば起こるので、運営者が潤沢である時には、その場に立哨を立てて、通行禁止エリアに入る前に制止し、無用な失格を出さないようにするのが一般的です。十分それが想定された迷路状の庭園部では予防措置として立哨を立てたのですが、当該部分は朝の確認の際にはとても通れる状態ではないとの報告だったので、限定されたスタッフではそこに立哨を立てる必要はないという判断になっていました。どうやら、競技中にその部分の柵が移動されて、通れる状態になっていたのです。
この大会では、選手の移動軌跡をストリーミングするためのGPSもうまく機能しませんでした。トラックがとれているの選手はごくわずかで、GPSによる失格の判定もできませんでした。自ら、「自分は失格エリアに入った」と申告した選手が出た日本チームから見れば理不尽な話です。一方で主催者としても策はありません。といって、競技を不成立にしても幸せな人は居ません。結局、「コーチを集めて、『少ない人数で運営していることを理解し、それぞれがフェアに振る舞ってほしい』という注意喚起をする」ということで、日本チームには納得をしてもらいました。
この話には後日譚がありました。夕方になって中国チームのコーチから、「選手は立ち入っていないというのだが、GPSの軌跡から立ち入ったようだ」という申告があり、メダリストであったその選手を失格としました。主催者としては苦い経験である中で、注意喚起が通じたようで、涙腺が緩む瞬間でした。
運営も少しづつ慣れてきます。一昨日のモデルではバスが間違った目的地に到達するというアクシデントがありました(これは世界選手権が北欧からよりマイナーな国で行われるようになって、しばしば発生した「クラシックな」と呼ばれるトラブルです。それ以降、何も知らない振りをして、朝にバスの運転手に「今日はどこいくの?」と聞くことがイベントアドバイザーとしての重要な仕事となりました。「一昨日と同じ場所だね」。ミドルの会場はモデルの会場と同じなので、運転手の答えは正しいのです。やれやれ。
この日は、スタート地区のトイレが足りないので、バスのトイレを使うことになっていたのですが、その話が現場には伝わっていませんでした。止まっている時は使えないと運ちゃんは言い張ります。確かに止まっている時は電気を使いたくないでしょうから、理解はできますが、200人近くいる選手には会場のトイレだけではたりません。こんな時は泣き落としです。「ボーイはいいんだよ。でもガールは困るだろう?」運ちゃんは、仕方ないなあという顔でOKをしてくれました。因みに香港ガールは藪の中でしてました。
その後、フィニッシュエリアに移動することになっているバスには、選手の荷物を積んで移動させることになっていましたが、これもうまく伝わっていません。バスとは別の場所に荷物置き場が設定されたおかげで、そこに荷物が100個単位で放置されています。これも運ちゃんにお願いしてバスを少し動かしてもらい、後はタイ人のボランティアスタッフを呼んで人海戦術で荷物を移動。選手を見送ったチームスタッフもこの荷物運搬には手を貸してくれました。参加者も自分の競技の質を損ねない範囲で運営に協力する。オリエンテーリングが誇るべき光景でした。
この日は運営のあらゆる面がスムースでした。選手も森とコースには満足してくれたようです。アジアの熱帯でも競技性のオリエンテーリングができると初めて証明された瞬間でした。男子の優勝者伊藤樹選手のタイムも素晴らしく、ぴったり優勝設定の35分。2位が小牧選手と、日本のダブルエースが活躍してくれましたが、女子は残念ながらエースの稲毛選手、ホープの山崎選手ともに思い通りのレースができず、かろうじて山岸選手が3位に入賞しました。
仕事をやりきった満足感のあるレースとなりました。
(次回がタイでのアジア選手権についての最終回です)