【M-nop letter+】2025年10月号

今回の会員ブログは簡易版にてお届けします。

 

※お知らせ※

2026年1月31日、2月1日に当法人フラッグシップインベント有度山トレイル三昧を予定しています。運営にご興味ございましたら是非お声掛けください。

【目次】

■現在・今後の活動■

詳細は「現在・今後の活動のご紹介 」からご覧いただけます。

<主催事業>

  • 静岡大学公開講座(登山者のための読図)
  • 有度山トレイル三昧2026【スタッフ募集】

<他団体による主催(M-nop協力・村越の講師参加等)>

  • オリエンテーリングin朝霧
  • 国立登山研修所オンラインセミナー(2024年)オンライン動画アーカイブ

<村越が関わる国際イベント> new!!

  • デフリンピック(2025.11.15-23)
    その名が示すように、これは聴覚障害者のためのオリンピックで、かれこれ100年の歴史がありますから、パラリンピックよりも老舗の国際マルチスポーツイベントです。
    そこにオリエンテーリングが採用された経緯は定かではありませんが、今回の東京大会でも、オリエンテーリングがアーバン:日比谷公園、フォレスト:伊豆大島で11月15~23日の会期で実施されます。
    アーバンのテレインである日比谷公園はフィニッシュ会場を中心に誰でもアクセスできます。週末開催ですので、観戦にも最適です。
    デフリンピック全体のURL:
    https://deaflympics2025-games.jp/
    オリエンテーリングのURL:
    https://deaflympics2025-games.jp/main-info/sports/orienteering/

  • スキーO世界選手権(2026.03.01-)
    3月1日より北海道のルスツリゾートで開催されます。
    日本開催は2009年についで2度目となります。
    フットO以上にマイナーなスキーOはヨーロッパ以外での開催は日本の2回のみです。しかも、近年では、温暖化のため北欧以外では開催が難しくなっており、日本での開催が期待されていました。
    両手の塞がるクロスカントリースキーで時には時速50kmで疾走しながら的確にルートを選択する様がスキーOの見所です。
    併設の大会も用意されていますので、観戦と参加の両方を満たすこともできます。
    大会URL: https://wsoc2026.jp/

■最近の活動から■

【南欧の史跡を訪ねて】

 歴史ある南欧には教科書級の史跡が数知れずあります。オリエンテーリングではなかなか訪れるチャンスのなかったこれらの史跡を、スペインでマスターズ選手権の後に訪れることにしました。南仏の城壁都市カルカッソンヌは都市計画を学んでいた学生のころ訪問。スペインの巡礼の道はさすがにボリュームがありすぎ。そうだ、世界史の教科書に出ていたポン・デュ・ガールに行こう!

 

 ポン・デュ・ガールはフランス語でガール県の水道橋(すいどうきょう)。都市建設で名高いローマ人が植民地への水道供給のために作った橋です。ローマの水道橋は、すでに2019年の世界選手権の際にもスペインのタラゴナで見ていました。全長約200m、高さ27mのアーチ橋。技術力は感じたものの、それほどの感動はありませんでした。世界史の教科書に載るほど? 

 

 今回ポン・デュ・ガールを訪れてその疑問は撤回。台地の中腹を通るアクセス路から見上げる橋は、魂を揺さぶる荘厳さといって過言ではありません。高さ約50m、長さ275mでタラゴナの水道橋の倍近い高さがあります。実際、ルソーもこの橋を見て、人間の所産の偉大さに感動し、「私はどうしてローマ人に生まれなかったのだろう」と感嘆したと言われています。

ポン・デュ・ガールはローマを代表する建造物の一つ。谷の幅も狭くなっており、川幅もワンスパンで超えられる場所を選んで建造されている。0.25%とも言える一律の勾配で水を流す技術力もローマならでは。
ポン・デュ・ガールはローマを代表する建造物の一つ。谷の幅も狭くなっており、川幅もワンスパンで超えられる場所を選んで建造されている。0.25%とも言える一律の勾配で水を流す技術力もローマならでは。

 水道橋があるということは、水路があり、当然ながら水源があるはずです。水源は果たしてどこにあるのだろう?橋のたもとにあるミュージアムショップにあった解説書の地図でその答えはすぐに見つかりました。

ローマ水道の水路を示す地図。北西部が源泉で、最後はニームに流れつく。
ローマ水道の水路を示す地図。北西部が源泉で、最後はニームに流れつく。

 20kmほど北西に離れた場所で、その名もフォンテイン・ド・ウー。一方、供給先の都市は、昨日TGVを乗り換えたミームではありませんか!?南仏の中心的植民地であり、ミームの競技場は、ローマ以外の植民地の中ではもっとも保存状態のよい競技場だそうです。見ておけばよかった。

 

 せっかくなのでフォンテイン・ド・ウーに行きました。ポン・デュ・ガールを訪れる観光客はフランス最多と言われていますが、源泉をみた観光客はそう多くはあるまい。現在も近隣都市の水源になっているため、湧水自体を見ることはできませんが、そこから流れ出す清冽な流れを確認できました。

源泉の様子。左のフェンスの中が湧水からの水流。建物には中が源泉であることが記されている。
源泉の様子。左のフェンスの中が湧水からの水流。建物には中が源泉であることが記されている。

 湧水はここから約50kmの水路で山をうがち、ガルドン川を越えて都市へと運ばれたのです。差し詰め、井之頭池から水道橋(すいどうばし)を超えて江戸市中に運ばれた神田上水。2020年の武蔵野湧水巡り番外南仏版!

 TGVを乗り継いで、さらに北イタリアに赴きました。目的地はカモニカ渓谷。これも地図学の教科書ならたいてい載っている世界最古の地図が目的地です。

 

 こちらは1979年にイタリア初の世界遺産に指定され、登録時には約14万点の岩絵が見つかっており、70kmに及ぶ渓谷の中腹の岩盤の至るところに見られます。その多くは、人間や動物、狩猟や祭事の様子ですが、その中に紀元前1500年頃に描かれた明らかに地図と分かる岩絵があるのです。

カモニカ渓谷の世界最古と言われる紀元前1500頃の岩絵の解説図。耕作地や集落とともに、急斜面のつづら折れ道らしいものも描かれており、興味は尽きない。
カモニカ渓谷の世界最古と言われる紀元前1500頃の岩絵の解説図。耕作地や集落とともに、急斜面のつづら折れ道らしいものも描かれており、興味は尽きない。

 訪れて分かりました。緩やかな傾斜が再び急傾斜になるU字谷の中腹にあるその岩盤からは、谷底の様子を手にとるように見ることができます。

本物の岩絵はU字谷を望む緩斜面の縁にある。この光景を見たら、誰でも地図が描きたくなる、というものでもないらしい(笑)。
本物の岩絵はU字谷を望む緩斜面の縁にある。この光景を見たら、誰でも地図が描きたくなる、というものでもないらしい(笑)。

 この場に居たら、動物や人間ではなく空間を描いてみたい、私ならそう思います。ただし、地図の岩絵はこの他にそれらしいもの1点が知られるのみですから、動物や人間を描きたい思いと比べたら、地図づくりに情熱を燃やす人はそれほど多くないということなのでしょう。

 

 南仏も北イタリアも、自分の文化的活動が歴史の流れの中の一コマであることを感じさせてくれる場所でした。

 

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

活動をサポートして下さる方を募集しています

2015年3月のシンポジウムのプログラムと村越の発表資料を掲載しております。

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